青春れもねーど。【Yuta.K】 (ページ24)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:129,393 hit

☆24 ページ24

あとはもうひたすら走るしかなくて。

後ろを走ってる人の足音がだんだん近づいてくる気がするけど、とにかく自分が出せる精一杯の力で走る。

『Aー！あとちょっとだぞ！』

トラックのカーブを曲がったときそんな声が聞こえて。

前を見ると、アンカーの襷を掛けて大声で叫んでる岸の姿が見えた。

そこで走るスピードが上がったような気がしたのは気のせいだと思いたいけど。

「…き、しっ、がんばれ…っ！」

『っしゃ任せろ！』

バトンを渡す瞬間に見えたのは、私が大好きになった、キラキラした笑顔で。

スピードを上げる岸との差を詰めているのは、4位につけてる顕嵐くん。

普段の姿からは想像出来ない真剣な顔で次々と前のランナーを抜かして2位につけた。

どっちが1位になってもおかしくない距離で、自然と声を上げてる自分がいることに気づいて。

「…岸！！頑張って！！」

そのままゴールテープを切った岸は、最高の笑顔で私に向けてグーサインを送った。

勇『いや～岸くんほんと速かったね』

真「ほんと足だけは持ってる」

リレーが終わったあとすぐに閉会式が始まって。

終わったあと自分たちのテントへ戻ってそんな会話をするけど。岸の姿が見当たらない。

「…じんちゃん、岸は？」

勇『それがさ、知らない間にいなくなってて』

「そっ…か」

真「探しに行ってこれば？あの走り見てファンがついたのかもよ」

勇『片付けなら二人の分俺らでやっとくよ？』

なんて、ニヤニヤしながら茶化してくるけど。…それは笑えない。

「……見てくる」

行ってらっしゃい～とふたりに見送られて岸の姿を探す。

テントを仕舞っている人たちの間を掻き分けて、人がまばらになった中庭まで来ると。

「岸くんっ」

という声が聞こえて、その方向に目をやれば、探していた岸の横顔と、…藤山さん。