青春れもねーど。【Yuta.K】 (ページ23)

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後ろから頭を強引に掴まれて引き離された体。頭上から聞こえるのは岸の声。

綺麗に結われたお団子が崩れてしまわないかと場違いなことを考えてしまう。

すると途端に顕嵐くんはいつもの表情に戻って。

顕『Aちゃん口説いてんのー。ハチマキ交換しよって』

「え、ちょ…」

岸くんには関係ないよね？

と、顕嵐くんは挑戦的な笑みを浮かべた。

だけど岸は、そんな顕嵐くんとびっくりしている私とを交互に見つめて。

『あるし』

「え？」

『………俺がコイツと交換するから！』

「はっ？」

何言ってんの？

そう聞き返そうとしたタイミングでリレーの召集のアナウンスが流れて。

顕嵐くんがすれ違いざまに、岸に何かを囁いた。

…何言ったんだろう。

岸の顔が不機嫌に歪んだのを見て、よくないことだったのは分かったけど。

真「あ、いた！もー、早く並んで」

「ごめんごめん」

勇『あれ、岸くんなんか怒ってる？』

『別に！』

あからさまに眉をひそめて、少し遠くに並んでいる顕嵐くんを闘争心剥き出しの目で見つめて。

そのまま入場が始まってしまい、私と真希、岸とじんちゃんで別れて走っていこうとしたとき。

「……う、わっ、なに」

『顕嵐には負けねえから』

「は？」

『…俺のことだけ応援しとけよ』

腕を掴まれて、そう一方的に告げられた言葉。

俺のことだけ、なんて言われても。同じクラスなんだから当たり前じゃん。

って、一丁前に言ってみるけど、きっと。

岸が違うクラスだったとしても応援しちゃうんだろうなって思ったり。

「…真希、吐きそう」

真「やるからには1位目指してよ？私も頑張るんだから」

そう言って、スタートラインに立った真希。

先生がピストルを掲げて。

聞きたくなかった音が鼓膜に響いて、真希を含めたランナーたちが一斉に走り出した。

元々陸上部だったらしい真希は他の子たちと差をつけてじんちゃんへとバトンを繋いだ。

じんちゃんに渡った瞬間、私の心臓はこれまでになく音を立てて鳴る。

少し差は縮まったけど変わらずの順位でじんちゃんが近づいてきて、バトンが触れた。

勇『A、頑張れ！』