迷々、月ハ隠レ ページ43
「…で、また俺の前に現れたんですね」
「いやあ、だって藍川くんだけだよ?あの子の血鬼術にかからなかったの。」
青い、張り付いたような笑顔の人の形をした何か。
暗い視界に鮮やかな赤と青が浮かぶようで、目に悪い。
「俺だけかからなかった…なるほど、やっぱりあの歌が血鬼術ですか。強い者ほどかかりやすいとか?」
「いやいや、そんな事じゃないよ。
藍川くん、俺のことばっか考えて、ちっとも眠くならなかったでしょ?」
助けたのか?この得体の知れない人物が、一度も会ったこともない、俺を。
気配が全く分からない、人間なのか、鬼なのか、それともさらに別の何かなのかも。
そんなものに助けられたところで、生きた心地が全くしてこない。
「いやー、よかったね。あの血鬼術って、下手したら鬼でもかかるらしくて!聴き入らなければいい話なんだけど。」
「……、え?」
「藍川さん!!」
灯景さんが青を鋭く突く。
青はにやりと怪しく笑った顔のまま暗闇へと溶けるように見えなくなった。
「藍川さん、あれ」
「……うん、あれは、上手く擬態しているだけで、鬼です。」
「幻惑系の血鬼術ですかね、ボロ出すまで全然わからなかった。」
呼吸を整え、眠らされて身動きの取れない仲間を守るように立つ。
どこから奴が来ても、迎え討てるように。
ぱちり、
瞬きをすると、先程までの暗闇は消え失せ、四人だけ洋館のような所にいた。
未だ眠らされている京さんと、同じくして、高い所の柵のようなものに引っかかったままの天原さん、半ば背中合わせの状態の灯景さん、そして俺。
「なん、だ…ここ!?」
「下弦の壱の…血鬼術とは違う、歌が聞こえなかったのに…?」
焦る自分たちを見て嘲笑うように、どこからか奴の声が響く。「ようこそ、俺の屋敷へ」と。
「イチ、ニ、サン、シ…うーん、もうちょっと連れて来たかったけど、定員超えしちゃうんだよなぁ」
「血鬼術…!?」
「わからないです、純粋に下弦の壱の血鬼術にかかっているだけでこれは幻かもしれません」
「え?あ、そっかそういうこともあるか…」
「えぇ?俺の言ったこと信じてくれなかったの?藍川くんは血鬼術にかかってないって。」
りん、と静かに鈴の音がする。
瞬きをする。
目の前に、貼り付けたような笑顔。
至近距離に、奴がいる。
「ねぇ?」
距離をとっても、すぐ近づかれる。
「遊ぼうよ。」
目をそらしても、その先にいる。
「鬼殺隊、藍川久留米。」
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ライ - 続編楽しみにしてます!とても面白かったです! (2020年3月27日 21時) (レス) id: 56923292e8 (このIDを非表示/違反報告)
風守 風華 - このお話本当に大好きなので更新頑張ってください…!! (2020年3月14日 13時) (レス) id: 050c795d91 (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます!最初よりも更新ペースが落ちてきてしまいましたが、なんとか頑張らせていただいてます…!楽しみにしていてくださいね! (2020年3月1日 23時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
かもめ - 続き楽しみにしています!! (2020年2月29日 22時) (レス) id: fbaa55833c (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - 匿名希望のななしのごんべさん» 失礼します、コメントありがとうございます。(建前)エヘッありがてぇ(本音) (2019年10月17日 22時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:時坂豆腐 | 作成日時:2019年9月23日 14時