騒天の歌声 ページ30
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──場所は変わり、山間の舞の町──
『…、これは､まずいな…』
自分より階級が下の隊士の死体に囲まれ､一人身を潜める。
風に乗って､微かに美しい歌声の旋律が聞こえる。
『まさか…十二鬼月が､こんな所にいるだなんて…』
家屋の陰から､声の聞こえる方の様子を伺う。
少し先の家の屋根の上…いや､さらに奥か。少し山に入った辺りの木の枝に腰かける､子供のような姿。
『子供の姿だからって…油断した…』
何より雑面を付けているし､その上手元が見えないほどの大きさの緩い着物を着ていて､何一つ目視ができなかった。
ああもう…これだから私は同期に置いてかれんだよなあ…！
未だに染まらない…そのまま､砕けるように折れた刀を見つめる。
─オレの刀ァ､Aだったら折らずに使えるって信じてッから！
ごめんね…私じゃあ､その期待には応えられなかったよ。
微かな音を拾うことすら､脳が痛む。
あの鬼は､“音”を武器にするんだ。
骨を伝って､鼓膜を震わす鼓動すら頭蓋骨を割りそうだ。
──、A、さん？…もしもし？Aさーん？｣
薄らと閉じていた目を開くと､牡丹色の髪─染めているのか､元からなのかはわからない─と､一部が帯のように長い羽織の同い歳くらいの端正な顔立ちの人が､いつの間にか目の前にいた。
その人は､私のことを知っているみたいだ。
『…誰…？』
脳が痛まないように声を出す。ほとんど言葉にならなくて､ただの声帯の振動と変わらないような声。
｢ええと…階級乙、
京水嵩…聞いたことはある。
私と同期､そして同じ歳でありながら我流の呼吸を自分だけで編み出し､その能力で､私がまだ己であるにも関わらず彼は既に柱に近い乙まで上り詰めた。
でも､最終選別の時には､こんな女性的な美しさと…謎の艶やかさは纏っていなかったはず。
｢大丈夫？鼓膜は破れてない？｣
『それは…大丈夫。あなたこそ大丈夫なの…？』
｢俺は大丈夫。…悔しいことに､俺の隊は到着が少し遅れたんだ。｣
そう話す間にも､ざんっ と刃が何かを断ち切る音が聞こえてくる。
｢…とりあえず今は､撤退しよう。｣
『え…でも､あの鬼が人を襲わないとも…』
｢いいや､無理をすると犠牲が増えるだけ。急ごう。｣
さっきよりは､脳の痛みは引いてきた。
…いつの間にか､歌声は消えている。
悔しいけど､撤退は今のうちだった。
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ライ - 続編楽しみにしてます！とても面白かったです！ (2020年3月27日 21時) (
レス) id: 56923292e8 (このIDを非表示/違反報告)
風守 風華 - このお話本当に大好きなので更新頑張ってください…！！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 050c795d91 (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます！最初よりも更新ペースが落ちてきてしまいましたが､なんとか頑張らせていただいてます…！楽しみにしていてくださいね！ (2020年3月1日 23時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
かもめ - 続き楽しみにしています！！ (2020年2月29日 22時) (レス) id: fbaa55833c (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - 匿名希望のななしのごんべさん» 失礼します､コメントありがとうございます。(建前)ｴﾍｯありがてぇ(本音) (2019年10月17日 22時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時坂豆腐 | 作成日時：2019年9月23日 14時
