噂話なんて ページ22
一司は覆面のようなものと帽子をつけ直すと、
｢こんな夜中に出歩くと､たとえお前でも鬼に襲われるぞ？｣
と冗談混じりに言った。
俺は半ば生返事で｢まあ､それもそうやな｣とだけ返した。
一司は生返事にやや不満そうな表情をしているけれど、俺は構わず､｢すまん､急ぎの用あるから話は今度な｣と言ってその場を離れようとする。
本当は､急ぎの用なんてないのに。
｢じゃあ仕方ない､気をつけてけよ､霧玄。｣
｢お前もな､一司｣
さっきよりは少し遅く､
被っていた布が頭から落ちても､今は夜だから何ともない。
─明日夜､鬼狩り様が来るそうだよ
─良かった､これでやっと安心して眠れる
明日じゃなかったのか､鬼狩りが来るのは。
もう来てるじゃないか。
巳繰にどう別れを告げたらいい､今戻るには､恐らくまた一司が─鬼狩りが─いるであろうところを通らなきゃいけない。
鬼狩りに出会ってはいけないはずだったんだ、
俺は､本当は､鬼だから。
小路から､赤い羽織の子供が顔を出した。
危うくぶつかる所で､ギリギリ避けたが､そいつも刀を持っていて詰襟服を着ている。
鬼狩りの子供だった。
｢うわぁ！？はっや！？｣
｢！？ 危ないやろこんな夜中に､はよ家帰っとき！？｣
ごめんなさーい！と､勢いよく深く頭を下げ謝るその子供は､髪紐に奇妙なものをつけていた。
音の鳴らない､木でできた鈴。
｢あー…､その鈴､音鳴ってへんで。今度交換するか直してもらいや。｣
本当はなんとも思ってないけど､ただぶつかりそうになって変に怒っている大人 にはならないために適当に助言するフリをして､その鬼狩りの子供から離れるように走り出した。
気がつくと､随分病院から離れてしまった所にたどり着いていた。
｢巳繰に別れを告げる口実のためやってのに…｣
つい口から言葉がこぼれ落ちる。
｢そもそも､鬼狩りがこんな早くに着くのが悪いんや､こっちの準備もあるんやから…｣
ああもう､噂話なんてもの､頼りにするんじゃなかった。
｢ぉう､そこの若造｣
聞きなれない声が背後から降ってきた。
振り返ってみると､明らかに人を喰ったあとの､血塗れの大きな鬼が､空腹に耐えられない という目で俺を見てきていた。
俺が鬼とも気づかず､俺を喰う気だ。
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ライ - 続編楽しみにしてます！とても面白かったです！ (2020年3月27日 21時) (
レス) id: 56923292e8 (このIDを非表示/違反報告)
風守 風華 - このお話本当に大好きなので更新頑張ってください…！！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 050c795d91 (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます！最初よりも更新ペースが落ちてきてしまいましたが､なんとか頑張らせていただいてます…！楽しみにしていてくださいね！ (2020年3月1日 23時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
かもめ - 続き楽しみにしています！！ (2020年2月29日 22時) (レス) id: fbaa55833c (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - 匿名希望のななしのごんべさん» 失礼します､コメントありがとうございます。(建前)ｴﾍｯありがてぇ(本音) (2019年10月17日 22時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時坂豆腐 | 作成日時：2019年9月23日 14時
