白んだ小部屋 ページ20
──ある町の､小さな病院。
開け放った窓からそよぐ風が､ふわりと
夕の日が淡く差し込む小さな部屋の中に､一つだけの簡素な寝台に一人の青年が横たわっていた。
カタッ と､窓枠に何かが乗り上げる音で青年は目を覚まし､力なく体を起こそうとする。
｢すまん､起こしたか。｣
窓の外─正確には､ちょうど窓の辺り─から､
｢…いえ､もうじき貴方が来る頃だと思っていたので､気にせんとってください。｣
｢…そうか それならええんや。
今日も外の話､持ち帰ってきたで。｣
西洋風の建物であるため､窓枠から､緑の着物を着た青年は土足のまま部屋の中へ､ひらりと入り込む。
｢最近､
｢えぇ？本気で言っとんの？それ。｣
｢本当ですよ。…でも､悪い噂も同じ頃から耳にします。｣
夕の日が傾き､質素な白い部屋の中を茜色に染める。
｢なんでも、日々鬼が町中をうろついて､人を襲うのだとか。｣
｢ほぉー…ん｣
｢それに､その鬼は夕暮れ時から夜明け前まで活動しているらしいんですよ。｣
｢うぅわ､前に話した活動時間全部でうろついとるやん､怖いな。｣
｢ふふ､そうですね。でもこんな病人は､きっと食べてもおいしくないので､きっと鬼もここへは来ませんよ。｣
─そう､ここは病院の､入院患者の為の一室。
一際人の立ち寄らない､奥にあるこの病室には､もはやただ死を待つだけの人間のみ､日々を透かして過ごしている。
｢そーやって油断してると､腹空かせた鬼が誰彼構わず食いに来るで？｣
｢その時は相眞さんに守ってもらいます。｣
｢自分の身くらい､自分で守ったらどうや､
巳繰 と呼ばれた青年は､それができるならここにいませんよ。とくすりと笑いながらそう言った。
｢…そうや､鬼で思い出した。｣
日が沈み､部屋の色も藍色じみた頃､静寂を断ち切るように相眞が口を開いた。
｢どうしたんです？｣
不思議そうに尋ねる巳繰を横目に､相眞はそのまま言葉を続ける。
｢明日夜､この町に鬼狩りが来る。｣
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ライ - 続編楽しみにしてます！とても面白かったです！ (2020年3月27日 21時) (
レス) id: 56923292e8 (このIDを非表示/違反報告)
風守 風華 - このお話本当に大好きなので更新頑張ってください…！！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 050c795d91 (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます！最初よりも更新ペースが落ちてきてしまいましたが､なんとか頑張らせていただいてます…！楽しみにしていてくださいね！ (2020年3月1日 23時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
かもめ - 続き楽しみにしています！！ (2020年2月29日 22時) (レス) id: fbaa55833c (このIDを非表示/違反報告)
時坂豆腐(プロフ) - 匿名希望のななしのごんべさん» 失礼します､コメントありがとうございます。(建前)ｴﾍｯありがてぇ(本音) (2019年10月17日 22時) (レス) id: beb385ff6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：時坂豆腐 | 作成日時：2019年9月23日 14時
