渡河成否判定 ページ1
。花垣武道にとって、それは、絶望にも等しい一瞬だった。
宿敵が東京卍會の信頼を勝ち得た。見事、己の利益を掴み取った瞬間だ。
松野千冬にとっても同様だ。
隊長のためにもと急いていたはずだった。チームのほとんど誰にも打ち明けられず、数少ない同志とともに、阻止するはずだった。阻止したかったはずだった。
彼らだ。彼らだけだ。
稀咲鉄太という男を東京卍會内から警戒し、探り、そして――出し抜かれた。完全に。その絶望を共有できたのは彼らだけだ。
花垣は、千冬は、東京卍會の構成員だ。ゆえにこそ、総長を守る忠臣、という建前を仕立て上げた隊長を、それでも糾弾なぞできるわけもない。
未だ稀咲の計画は盤石である。ひっくり返せる手立てなど、彼らには、思いつかなかった。
彼らには。
呆けていられたのは一瞬だ。鳴り響いた音が半強制的に現実を叩き込む。
野球選手がホームランを打つときの音にどこか似ていた。それよりもずっと、鈍く、重く、嫌な雰囲気を孕んだ音だった。
場地は鉄パイプを躊躇なく振り抜いた。それは、寸分違わず、稀咲の後頭部に命中した。
東京卍會のメンバーではなく、敵たる
だから、場地圭介は迷わない。たとえ皆に謗られようとも。たとえ二度と仲間と呼ばれずとも。たとえ己が人殺しになったとしても。
その罪は、とうに、背負う準備ができていた。彼はそのように確信していた。
まだ十五を満たさぬ少年は、ただひとり、決意していた。
――８．３抗争以降、花垣武道がタイムリープしなかった世界線では、まず、二〇〇五年十月三十一日に大きな転換点を迎えた。
東京都の不良少年史では、これを、のちに血のハロウィンと呼称する。
場地圭介が羽宮一虎に殺される。
羽宮一虎もまた、佐野万次郎により殺される。
稀咲鉄太がその罪を代役に被せて出頭させる。
大まかにまとめるなら、これら三点が要所だろう。これらすべてが揃って初めて、かの時間軸において、東京卍會は巨悪へと転がり落ちていった。
ところで。
バタフライ・エフェクトという言葉がある。
ここでは、エドワード・ローレンツが本来提唱したかった長期予測不能性についてはあえて割愛する。また、バタフライ・エフェクトについて詳細な解説をお求めの方には、力学の教科書の読み込みを推奨したい。
今取り扱いたいのは、特に、初期鋭敏性についてだ。
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-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。今回は我ながら異様なスピードで書き上げてしまいました。続きはしばしお待ちいただければ幸いです。 (2022年11月1日 21時) (
レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 一番最初から読み直してたら血のハロウィン終わってた💦場地さん生き残ってるー✨稀咲兄弟がお互い確認しちゃった‼️続きが、聖夜決戦がどうなるのかメッチャ気になりますー💦更新、楽しみにお待ちしてます。 (2022年11月1日 11時) (レス) @page50 id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - 安蒜 佑さん» ありがとうございます。ずいぶん長くなってしまったシリーズですが、それでも読んでくださる方がいらっしゃることがとても嬉しいです。更新ペースはまちまちなので気長にお待ち下さいませ。 (2022年10月31日 13時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
安蒜 佑(プロフ) - 面白くて面白くて、続編に進む度にまだ続編があるか確かめて読んでいましたが、ついに追いついてしまいました...ちなみに、2日で全部読みました。余暇の時間すべて読むのに捧げました(笑) 大好きです！続きも楽しみにしてます！ (2022年10月30日 23時) (レス) @page50 id: 789e459cc4 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - ありすさん» ありがとうございます。今後ともゆるゆると書いていきますので気が向いたときにでも覗いていただければ幸いです。 (2022年10月25日 21時) (レス) id: 3cd0340111 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：-Doe | 作成日時：2022年10月25日 13時
