＊ ページ48
「……こいつら、俺が気ぃ回してリスクから遠ざけんでもよかったんじゃというきもちがヒシヒシと」
「ナニ？」
「作りゃあいいんだろ、作りゃあ。なにが食いてーの」
投げやりに言い放った副部長に「ビーフシチュー」「唐揚げ定食」全く違うリクエストが即座に二つ。相変わらず事前に要望を擦り合わせない兄弟だ。
意見が一致してから——Aが口にする前に、灰谷兄弟は顔を見合わせた。各々捲り上げる袖に、ものすごく嫌な予感。
「よお竜胆、そろそろ灰谷兄弟の勝者を決めるときが来たようだぜ」
「一年先に生まれたからっていつまでも仕切ってんじゃねーよ。二度とデケェ口叩けねえようにしてやる」
「ハハッ兄ちゃん油断してたわ〜よっぽど躾が足りなかったみてェだな」
「夜十時に
Aの声はわりと疲労していた。彼は本日、日付変更直後の零時から丸一日、学業の本分以外では誰かの使い走りと後始末ばかりしていたし、なんならそれしかしていない。
疲れていて当然。
灰谷兄弟の勝者を決める突発的ハイタニ夕飯紛争(第ｎ次)の顛末は、ここに記すには些か余白が狭すぎる。
少なくとも彼らの夜食がビーフシチューでも唐揚げ定食でもなく、醤油ラーメン三つになったことだけは記録しておこう。
メールの受信音が響いたのは、ラーメンを完食し、洗い物に手を付けるタイミングだった。日付が変わる直前だ。
「……蘭ちょっと皿洗っといて」
「割ってもいーなら」
「良くねえが？ 訂正。水かけといて」
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From:中学留年
To:自分
Title:ごめん、部長
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しばらく教室やめる
いろいろありがと
またこんどベンキョおしえて
-End-
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受信内容を黙読。Aは何度か瞬きをする。
確かに最近、場地はいつにもまして勉強に身が入らない様子だった。
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From:自分
To:中学留年
Title:Re:ごめん、部長
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わかった
言ってくれればまたおしえる
-End-
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文末に「なんかあったら言えよ」まで打ち込んで、そこでAは指を止めた。
「……お節介か？」
余計な文面は消して、二行のメールを送信。
顔を上げれば流しどころかキッチン全体水浸しになっていて、彼は無言で頭を抱えた。一瞬目を離した隙に大惨事。さすがにカリスマ兄弟とて気まずげなご様子だ。
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-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。彼らの邂逅は今回は主題ではないのでさらっと流れますが、いつか再登場するのでお楽しみに。 (2022年9月28日 19時) (
レス) id: cbde0663a4 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 更新ありがとうございます✨サウス出てきた〜！と思ったら大寿くんと再会？！また面白い流れでワクワクして読ませてもらってます！ (2022年9月28日 15時) (レス) @page44 id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - 深月さん» ありがとうございます。読んでくださる方々に素敵だと思っていただけることがなによりも励みになります。気ままに読んでくださると幸いです。 (2022年9月25日 23時) (レス) id: cbde0663a4 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - 初コメ失礼します！ こんなに素敵な小説なのに評価が少なくてとても悔しい思いです。応援しているので、これからも更新頑張ってください！ (2022年9月25日 23時) (レス) id: 7c4abecb60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：-Doe | 作成日時：2022年9月7日 0時
