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「そんで、これが俺らの、フクブへの復讐。あいつが無駄に命投げて守ったもん全部壊して、そうすりゃ、いい加減あの世で後悔ぐらいしてんだろ。そろそろ懲りててくんねえかなあ」

 途端、兄弟は軽い口調に引き戻る。彼らの拳銃はきちんと弾が装填されていることを稀咲は既に知っていた。

「じゃーな弟クン。安心しろよ、オマエのことは微塵も恨んでねえから、特に苦しませたりもしねえ」

 ――望月が、痛む肩と足と腹を庇いながらも顔を出した時には、灰谷兄弟は既に、稀咲の死体を前にふたりして真剣に考え込んでいた。

「オマエら……無事なら連絡寄越せ、油売ってんじゃねえよ」

 思わず彼は罵声を浴びせた。「あれモッチー」「生きてたん?」兄弟はそっくりな顔をそっくりにきょとんとさせて、口々に言った。
 稀咲自体は弱いがあの男が何重もの策を弄するのは今に始まったことでもない。まさか助力が必要かと懸念して、怪我を押してまで様子を見に来たというのに、当然のように望月よりピンピンしている。

「てか潰せた? 半間」
「自爆装置出したから、たぶんな……」
「自爆装置出しといて生きてるオマエはなーに? 幽霊?」
「オマエらマジでふざけんなよ。……瓦礫がいい感じに落ちてきて助かったっつーかアバラと足はイッた」
「ヤベー、もう働かねえ方が良くない?」
「しゃあねえなあ。獅音の方は俺らが行ってやるよ、親切だから」
「ほざけ」

 悪態を吐けば折れたての肋骨が軋んだ。ドーパミンによるセルフ痛み止めが効いているのも時間の問題だろう。
 じろりと横目に死体を見て、まァそこそこ満足できたようで、と、望月は思う。

 灰谷兄弟はずっと、元副部長に怒っていた。ちゃんと手を離してやったのに、距離を取ってやったのに、くだらないことで勝手に死んだと怒っていた。
 倫理観とか常識とか良識とかそういうものが相変わらず極悪の方に振り切れっぱなしの言い分だが、とはいえ、彼らなりに元副部長をそれなりに大切にしていたのだ。

 正しくなくても賢く使え、とはどこぞの故人の口癖である。

 灰谷兄弟にとってこれは、彼らの元副部長への復讐だった。
 それで、これが、彼らなりの弔いで、心の整理の付け方だ。

「……ところでコレどうする?」
「イザナに回したらそれなりに使い道考えるんじゃねえか」
「アリだな。なら持ってくか」

 よっこいしょと竜胆が死体を肩に担ぎ(望月はわりと満身創痍、蘭が担ぐ選択肢は最初からない)彼らは揃って足を踏み出す。

「じゃ、あとはトーマン制圧RTAってことで」

 花垣武道のタイムリープが確定し、上書きされるまでの、ちょっとしたお遊びだ。

運命がきしむ→←*



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-Doe(プロフ) - kaluさん» 読んでくださりありがとうございました。しばらく更新が滞っておりますが、もう少し経ったら最後の話を書き始めるため、もしよければそちらも覗いてください。 (1月29日 18時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
kalu(プロフ) - 物凄く丁寧且つ緻密に書かれていて作品愛を感じました...。伏線も小ネタもすごい...。彼の言い回しや思考回路、他者との掛け合いなどが癖になり一気に読み進めてしまいました。とりあえずフクブくんには一発入れたいですね。素敵な作品をありがとうございます。 (1月3日 2時) (レス) @page50 id: 265da4aaa7 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。たぶんまた更新が若干滞りますので気長にお待ち下さい。 (12月16日 21時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 平和な未来が来て終わっちゃうのかとハラハラしてましたが、新たな展開にワクワクドキドキです✨いつも楽しく読ませてもらってます。 (12月16日 19時) (レス) @page50 id: 7d841f830a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:-Doe | 作成日時:2023年12月13日 1時

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