* ページ4
「わりと最近。振り込め詐欺の手口で、電番の偽装表示ってのが流行ったワケ」
海外の通信事業者を経由することで、発信者番号を偽装する。110番や119番、あるいは自宅の電話番号などを表示し、発信者を誤認させ、信頼させる手法。
「今年ン春にチェックが厳しくなったから、けっこう駆逐されたっぽいけど、まァ、目ェ掻い潜るやつはいるモンだわな。俺らの昔の仲間でもタチ悪ィやつは手ェ出してるっぽくて、そういうの回ってくんだけど――」
「――え、だってマイキーが言ったんじゃないの?」
言葉尻にほとんど被さるタイミングでのエマの問いかけ。電話向こうの声までは聞こえないが、おそらく、回答は最悪の方向で予想通りだ。
若狭がうすく舌打ちをこぼした、その直後である。
「ァあ? 女と、いてせいぜいじーさんって話じゃなかったのかよ」
――高らかな声。
ぞろぞろと立ち並ぶ者共は、お世辞にも育ちが良いようには見えなかった。ざっと最低二十人、一様に鉄パイプだの、木製のバットだの、なにかしらの武器を手にしており、その服装は赤い長ラン。
南朝天竺、と腕には記されている。
「しょうがねえな。イザナくん、男も殺したらそのぶん買ってくれっか?」
「……千咒、コレ持ってろ」
慶三がビニール傘を閉じて千咒の腕に引っ掛ける。「俺のぶんはいーワ」若狭もまた傘を閉じたものの、こちらは軽く振り回すようにして、自らの肩に担いだ。
ケータイのコール音を待ちながら――三途が妹の電話を無視しがちなのは、いつものことだ――千咒が二人を振り返る。
「ちょ、喧嘩すんの!? ならジブンも!」
「さっき言ったろ、寒ィんだって。身体あっためるにはちょうどいい」
「わしも出るか」
「じィさんはマジで引っ込んでな、滑って腰やるぜ、この雪」
雪は未だ降り止まない。エマと万作を背後に押しやり、二人は冷静に周囲を俯瞰した。
「……天竺な。八代目の手だと思うか?」
「そう、と、言いたいトコだけど……違ェ気がする」
慶三の問いに、若狭は首を横に振った。
「知識はある。金もある。手足を集める手立てもあんだろ。ただ……あいつがシンちゃんを理由に使うとは思えねえ」
「そりゃ同意見だ。ついでに、仕掛けるにしたってわざわざ自分のとこのトップク着せたままはあり得ねえな」
「そーね」
ただ、そうだとすれば――彼ら二人にも理解できた。今日の抗争。東京卍會と黒龍の同盟と、南朝天竺の争いの裏で、第三者の思惑が進んでいる。
少なくとも、万次郎のケータイの電話番号を把握し、真一郎の存在を知り、南朝天竺の特攻服を入手できる立場の人間だ。
41人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
-Doe(プロフ) - kaluさん» 読んでくださりありがとうございました。しばらく更新が滞っておりますが、もう少し経ったら最後の話を書き始めるため、もしよければそちらも覗いてください。 (1月29日 18時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
kalu(プロフ) - 物凄く丁寧且つ緻密に書かれていて作品愛を感じました...。伏線も小ネタもすごい...。彼の言い回しや思考回路、他者との掛け合いなどが癖になり一気に読み進めてしまいました。とりあえずフクブくんには一発入れたいですね。素敵な作品をありがとうございます。 (1月3日 2時) (レス) @page50 id: 265da4aaa7 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。たぶんまた更新が若干滞りますので気長にお待ち下さい。 (12月16日 21時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 平和な未来が来て終わっちゃうのかとハラハラしてましたが、新たな展開にワクワクドキドキです✨いつも楽しく読ませてもらってます。 (12月16日 19時) (レス) @page50 id: 7d841f830a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:-Doe | 作成日時:2023年12月13日 1時