＊ ページ15
「あのさァ」
ところで本当に寝そうな上にもしかしたらこれ走馬灯かもしれん。
Aは冷静に思ったので、この際とばかりに、場地に話しかけた。眠気覚まし半分。気を紛らわせる意味半分。
もしかしたらば本当に死にかねないので、せめてその前に確認しておきたい答え合わせが、ちょっと。
「俺、前……死神に、会ったことあんの」
「マジで縁起でもねえ冗談やめろ」
「じょーだんじゃなくて。歌舞伎町で」
焦燥ばかりだった場地の表情が「は？」となり、そして思案する顔つきへと変化する。
「歌舞伎町で、死神？ ……半間修二？」
「手の甲に、刺青、入れてんのな。罪と罰……」
「半間だワ。なにしてんだ……」
「あのコさあ。いま、トーマンなわけ？ いつから？」
「……トーマンだぜ、ハロウィンのあとから。その前は芭流覇羅だったし、芭流覇羅の前は愛美愛主だった」
マジでなに聞かれてんだろうな、という表情だが、場地は律儀に答えた。喋らせて意識を繋ぐことを優先したらしい。
君の素直さは美徳だな。Aは場地に対して、何度目かの感想を抱く。
「ならさあ。鉄太ってわかるか？」
「あ？ ……稀咲鉄太？ ……ぶちょ、塾長、稀咲と知り合いなのかよ？」
にわかに声色が険しさを帯びる。
Aは正直に答えた。
「弟だなあ」
「ァア！？ え！？ は！？ おと、弟ってあの弟！？」
「ところで、鉄太って……もともとは、愛美愛主だったりしたか？」
ぎくりと場地の肩がこわばった。
――相手の反応を引き出したいときは。まず、不意打ちで情報を与え、動揺したところに畳み掛ける。
Aは滅多にそうしない。己が意識してそういう手法を扱えると知っているからこそ、相手を尊重するために、敢えて封印している。その箍としては、たとえば良識や常識、あるいは倫理、そういうものが機能する。
今のAはわりと死にかけだった。本人が気力だけで意識を保たせているだけで、瀕死レベルの重傷といっていい。
いつもは理性的に抑えている振る舞いを、簡単に、実行してしまえるほど。
「あー、はー、なるほどなー……なるほどな？」
何故かことここに至って楽しげに笑い出した男に、いよいよまずいか、周囲が焦る。
一方で場地は、ストール越しに傷口を抑え込もうとする指先に、すこしだけつよく、力を込めた。背中に冷や汗がつたっている。その自覚がある。死にかけているAの心配ももちろんある。
しかし――彼は。
今自分が完全にやらかしたことに、気づいた。
「鉄太に、さあ。俺が生きてたら伝えといてくんね。……あとでツラ貸せって」
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-Doe(プロフ) - kaluさん» 読んでくださりありがとうございました。しばらく更新が滞っておりますが、もう少し経ったら最後の話を書き始めるため、もしよければそちらも覗いてください。 (1月29日 18時) (
レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
kalu(プロフ) - 物凄く丁寧且つ緻密に書かれていて作品愛を感じました...。伏線も小ネタもすごい...。彼の言い回しや思考回路、他者との掛け合いなどが癖になり一気に読み進めてしまいました。とりあえずフクブくんには一発入れたいですね。素敵な作品をありがとうございます。 (1月3日 2時) (レス) @page50 id: 265da4aaa7 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。たぶんまた更新が若干滞りますので気長にお待ち下さい。 (12月16日 21時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 平和な未来が来て終わっちゃうのかとハラハラしてましたが、新たな展開にワクワクドキドキです✨いつも楽しく読ませてもらってます。 (12月16日 19時) (レス) @page50 id: 7d841f830a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：-Doe | 作成日時：2023年12月13日 1時
