* ページ46
。 とはいえ当時の彼は成長期。身体が出来ていく過程で、その後遺症も寛解していった。中学で留年した少年は、なんなら高校でも一年留年しつつも、なんとか卒業できた。
さてこの時点で場地は二学年ぶん留年している。場地圭介は一九九〇年生まれで、花垣のひとつ上。……そして直人は花垣のひとつ下。
場地圭介は高校卒業後、すぐ、警察学校に入学した。ちょうど直人と同期となるタイミングで。
性格も能力も正反対。そりも合わない。お世辞にも仲が良いとは言えない。いがみ合いながらも腐れ縁が続いていった。
そしておよそ三ヶ月前に起きた橘日向の死。
直人に、千冬と一虎といった存在を教えたのは、場地そのひとである。
「……松野千冬は……」
「……知ってる。ひとの心配しといてテメェが無茶すンだよな」
場地は特に表情を変えない。ひらっと手を振って、その手をカーゴパンツのポケットに突っ込む。
「テメェも自分のこと先に考えてろよ。まだぜんぶ終わったわけでもねえしな、いやにしてもパクった幹部昏倒とかフツー予想しねえって……」
ぼやくようにこぼして、場地はスタスタと取調室から廊下へと踏み出す。被疑者もいない取調室に長居する意味もない。
いつも通りに見える。直人には。そのいつも通りの記憶自体、そもそも、ついさっき生えたばかりだとしても。
直人の腐れ縁は、かつての少年は、十二年前に死ぬはずだったらしい。
「場地巡査」
己も取調室を出た。すでに廊下の角を曲がろうとしていたその背を、直人は呼んだ。
「なんだよ」
場地は振り返りもせずに尋ねた。足は止めた。
花垣がタイムリープによって過去を変え、現在を確定させたことで、橘直人の記憶は分岐し、統合された。
今の直人には二つの記憶がある。ひとつは花垣とともに過去改変に挑んできた記憶。ひとつは八月の頭に殺された姉の復讐のため、千冬や一虎、場地を利用してきた記憶。
「純丘Aという名前を知ってますか?」
直人は尋ねた。前回のタイムリープで挙げられた名前で、唯一、情報らしい情報すら出てこなかった人間だ。
花垣とその名前について論じる時間はなかった。早く送り出さなければならなかったから。
場地が振り返る。かしげられた頭、整った顔立ちが訝しげに眉をひそめた。
「オマエ、塾長に興味あんの?」
「興味というか。東京卍會に関わっていると耳に挟んだんですが、調べても出てこなかったので。……塾長?」
「……俺が一瞬バイトモドキしてた塾の先生だから、塾長だよ」
62人がお気に入り
「東京リベンジャーズ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» いつもありがとうございます。続編も更新ペースはまちまちだと思いますので思い出したときにでも閲覧いただければありがたいです。 (2023年1月2日 1時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 大量更新ありがとうございます‼️本日分、一気に読ませてもらいました‼️未来軸気になりすぎます💦続編も楽しみにしてます。 (2023年1月1日 18時) (レス) id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。自分のペースで更新していきますのでまたお暇なときにでも覗いていただければ幸いです。 (2022年11月17日 12時) (レス) @page2 id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 新章始まって嬉しいです✨楽しみに待ってました‼️ありがとうございます😆 (2022年11月17日 8時) (レス) @page2 id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:-Doe | 作成日時:2022年11月17日 3時