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「……俺は。……べつに、イロイロ考えたんだよ」
「バカのくせにな」
「マジうるせえ」
訊いたかと思えば茶々を入れてくる。ひとにらみした場地に、とはいえ竜胆は口ぶりほど意地悪い表情でもなかった。すんとした様子でまたひとつ、浅漬けのきゅうりをつまんだ。
「で?」
衒いもない声音だ。軽い口調で、ゆえにこそ、言外の強制力が目に見えるようだ。
場地はしばし黙した。ドリルのページを確認して、ホッチキスで留めて、それから、ホッチキスを一度テーブルに置いた。
「……アンタどこまで知ってんだ?」
「どこまでっつっても、オマエらの話は有名だし?」
「……有名だからってアンタらが突っつくかよ」
「あー、ンならそうだな。フクブがオマエを許してねえのは知ってるよ」
浅漬けの下の方に沈んでいた白菜を、指が無造作に引き上げて、口の中に放り込んだ。すさまじいスピードで浅漬けは消えていく。場地はそれを咎めない。
「……一回目は、誘われて、二人でやった」
ぽとんと言葉が落ちる。「俺は止めらんなかった」場地は続けた。修飾語が著しく欠如し、目的語の示されない文章である。
「二回目も、誘われた。俺のせいだから、俺は、一人で止めようとした。つっても、駄目だったし、死ぬかと思った――思った、けど、生きてる」
竜胆の目つきは場地を俯瞰するそれだ。観察する、と言い換えてもいい。推し量っている。推し量られている。一言一句を聞き取って、うちがわを、覗こうとしている。場地にとって不快な目つきであり態度である。普段なら殴っている。
なので――場地は、今は耐えた。
「お節介な奴らのせいで生き残った。余計なことしてくれたから、俺は。……まだ、生きてるのが不思議だよ。マジで死んだと思った」
ぐっぱーと手を閉じては開いて、場地は、そのまま己の掌を数秒見つめた。それから目を閉じた。
「でも死んでねえから。……
「……だから、許してねえフクブか?」
「てより、部長は、俺たちをどっちも許してねえから。今は……」
尋ねた竜胆に、場地は目を閉じたまま答えた。すぐにぱっと目を開いた。
「つうかなんだかんだ二年も族やってきたしな。抗争やってる真っ最中でも俺にちょっかいかけられる新入りとか出てきてんだし、俺がわざわざ居続ける意味もねーだろ」
一気に早口に喋り倒して、場地はまたホッチキスをてのひらに握りしめた。まとめられてないドリルをぱらぱらと捲って、ばちんばちん、ホッチキスがまた音を響かせていく。
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-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» いつもありがとうございます。続編も更新ペースはまちまちだと思いますので思い出したときにでも閲覧いただければありがたいです。 (2023年1月2日 1時) (レス) id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 大量更新ありがとうございます‼️本日分、一気に読ませてもらいました‼️未来軸気になりすぎます💦続編も楽しみにしてます。 (2023年1月1日 18時) (レス) id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
-Doe(プロフ) - いにみっちょさん» ありがとうございます。自分のペースで更新していきますのでまたお暇なときにでも覗いていただければ幸いです。 (2022年11月17日 12時) (レス) @page2 id: e27fa4e6d9 (このIDを非表示/違反報告)
いにみっちょ(プロフ) - 新章始まって嬉しいです✨楽しみに待ってました‼️ありがとうございます😆 (2022年11月17日 8時) (レス) @page2 id: 2cf0cd68b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:-Doe | 作成日時:2022年11月17日 3時