【T卍R】愛情は保証にはできない

異国の異聞と共通点 ページ1

。寺野南という少年の身の丈は大きい。それはもう、たいていの自販機の天井を覗き込めるほど――これを別の言い方で表すと、日本国内ではかなりの高身長男性に分類される純丘Aが、並べば子どもにすら見えるほど、となる。

「Como está？」
「いつも通り元気だよ、こんなふうにトラブルに巻き込まれなければの話だが」

　Aは皮肉まじりにつぶやいた。コートの襟を後ろから無造作に掴まれている。襟を掴んだ張本人たる寺野は「ハハハ、面白い冗談だな」口を開けて笑った。襟を離して、ぱんとAの背中を叩くので、よろけた。
　体格差と筋力差とポジションの問題で、寺野にとっては軽い戯れでもけっこう威力が大きい。

「噂じゃあ、抗争に顔を出したと聞いているが」
「……あの抗争現場に手下を忍ばせるぐらいの人脈は、まあ、君には当然あるか……」

　Aは死んだ目でつぶやいた。噂と言っているだろう、寺野は言うわり愉しげだ。

　ハロウィンの抗争における純丘Aの現状は、せいぜいが花垣が下の名前を呼んだ程度で、観衆が聞き取れたかどうかは定かではない。聞き取れたとして、まずイザナおよび鶴蝶の身元を突き止めるのが先だろう。
　そしてAは、そもそも高名な不良どころか、潜入捜査モドキで下っ端を体感したぐらい――抗争に顔を出した素性不明の男が等号で純丘Aである、と結びつくなら、それは素性不明な男の知人と思しき人間にわざわざ聞き取ったか、顔写真でも見たかの二択になる。

　ハイハイ噂な噂、そういうことにしておくよ。あしらい方も軽くなってさておき。

「だいたい、顔を出したと言っても、怪我の手当して救急車呼んだ程度だぜ」
「そう聞いている。せっかく盛大な祭りに、惜しいな」
「惜しいか……」

　Aにとっては微塵も惜しくないので見解の不一致というやつ。

「なぜ俺を呼ばなかった？」
「呼んだら怪我人か死人が増えるだろうが」
「日本人はスケールが小さいな……」
「たぶん本当に言いたかったことは違うんだろうがニュアンスは理解した。なんとでも言えよ」

　そも彼らは日常的に連絡を取り合うほど仲良くない。
　寺野は本当に心の底から残念そうに、その場にいた実力者たちの名前を指折り数えている。実力者たちの複数名と知り合いなA、羅列される聞き覚えのありまくる名前に「目をつけられて可哀想に……」しみじみとつぶやいた。

　不良界にいる以上は自力でなんとかしていただきたいのでその他のコメントはしなかった。そうとも俺は一般人です。

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