【T卍R】お前らの罪を数えきれない (ページ23)

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傷害罪ページ23

。週真ん中、数多の人々のモチベーションがなんとなく下がる水曜日といえども、純丘Aが金欠な事実になんら変わりはなく、長期休暇やイベント、あるいは試験期間でもない限り、全日制高校は平日昼間に学校がある。
　しっかり授業とアルバイトをキメて帰宅したのは深夜十一時三分前。別名、青少年保護育成条例で十八歳未満の外出が禁じられる深夜帯ギリ手前だ。

　今日も今日とて品行方正優等生、どうにかもうちょい効率よく金稼げねえかなと思いながらの帰宅。鍵穴にシリンダーキーを差し込んで回、

「あ？」

　――回した瞬間、Aは思わず声をこぼした。
　半・キレ、と評すに相応しい声色だった。

　彼の名誉のために補足しておくと、声色から思われるほどキレてはいない。むしろその心境は困惑に近い。咄嗟に出てくる声が微妙にガラが悪いだけだ。
　灰谷兄弟の影響かというと特にそんなことはなくただの素。

　シリンダーキーとは〝錠前に取り付けられた鍵穴に、鍵を差し込んで開ける〟タイプの鍵全般を指す。
　このタイプの鍵はわりとどこにでもあって、家屋や金庫などの鍵に採用されている場合も多く、Aが住むアパートも例に及ばず。あまりにもどこでも使われているためピッキング被害も数多い。彼らが生きている今は某窓のコンピュータがようやくＸＰまで進んだぐらい、電子錠の普及率も著しく低いのだから、尚更だ。

　シリンダーキーも細分化すれば種類は様々。
　ただこの場合重要なのは〝鍵を開けようとしたとき、元から鍵が開いていた場合、若干手応えが違う〟という特徴。
　たとえば今Aが違和感を覚えたように。

　サッシに合鍵の姿はない。灰谷兄弟が我が物顔で所持してしまったので彼らのキーケースに連なっている――いや確かに使っていいとは言ったけどな、Aは思いながらも諦めた――ならば灰谷兄弟がいるのか、可能性としては最も高いがこれもまた首をひねる。

　Aが設定した厳守事項六箇条第四項め。
　曰く。

〝入退室時に鍵はかけること〟

　素行はアレだが、それでも彼らは、一度した約束事を守っていた。
　頭を掻いて、息を吐いたAが慎重に玄関を開ける。

「……ウッ、ワ」

　より正確性を期すると〝………………ゥ↓ッッッッッ、ワ→↑ァ↑↑↑〟ぐらいの表記になる。

　電灯に照らされて、ベッドの上の水色がわずかに揺れた。
　最近伸びてきたので染めたと竜胆本人が以前言っていた。