第117話 VIP Room ページ21
*
冬「ここです」
そう言われて着いたのは都内でも大きな病院だった。
最悪の事態も想定していたので少しだが心が軽くなった。
高層マンション並に高い病棟に入りエレベーターに乗り込むと、ほぼほぼ最上階のボタンを躊躇なく押す千冬。一切迷いのない動作に通い慣れているのだと悟った。
エレベーターを降りると豪華な装飾に飾られた廊下に足を踏み入れた。なんだこれ、1泊5万ぐらいする高級ホテルかよ。
不自然な程に周りを見渡しているオレを差し置いて千冬は遠慮なくその廊下を突き進む。
冬「……一虎君、何やってんですか」
虎「いやだって……なんだよ、これ
オレの知ってる病院じゃねぇ」
冬「そりゃそうですよ
VIP病室なんですから」
虎「ビッ！？」
冬「1泊10万ぐらいしてますよ」
虎「はぁ！？じゅ、じゅうまん！！？」
冬「一虎君うるさいです
病院なんで静かにしてください」
やたら冷静に受け答えするソイツに内心苛立ちながらも混乱していた。聞きたいことがありすぎて頭を働かせていると前を歩いていた千冬が立ち止まる。
顔を上げて病室の表札を見ると"佐野A様"の文字。
冬「ここにAがいます」
虎「……入っていい、のか？」
冬「ノックしてからですよ」
千冬の言う通りにノックをしようと扉の前に立つ。
自然と身体が緊張してしまって心臓がいつもより早く動く。落ち着かせるように深呼吸を数回繰り返し、覚悟を決めた。
ノックが2回、重々しく静かな廊下に響いた。
「どうぞー」
虎「！」
女の声が病室の中から聞こえた。
ドアノブに震えた手をかけ緊張を唾と一緒に飲み込み、引き戸をスライドさせ病室の扉を開けた。
───あれ、Aってあんな声だったっけ？
考える間もなく扉を開けると大きな窓から差し込む日差し。その次に目に入ったのは2人の男と1人の女。
そして、ベッドで寝ているAの姿。
虎「───…A？」
オレが呼びかけても反応を示さないAの姿。
居ても立ってもいられず近寄ると筋肉が衰えた細い手足に、鼻から入れられたチューブ、繋がれた管が今のAの状態を嫌でもわからせた。
千冬のあの顔を見た時、きっとAは今良い状況ではないと心のどこかで察していたが実際目にするとガツンと頭にくる衝撃。脳が理解したくないと拒否をしているようだった。
冬「Aは数年前から植物状態です」
*
第118話 Vegetative state→←第116話 Release from prison
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てる。 - 初コメ失礼しました！最初は恋愛系かな？？と思っていて読んでいたらバリバリの感動系で深夜に声を上げて泣いてしまいました(T ^ T) (2023年4月11日 0時) (
レス) @page3 id: 01aa01ae14 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - 更新楽しみに待ってます。泣 (2022年11月20日 22時) (レス) @page31 id: e007552609 (このIDを非表示/違反報告)
はむはむ(プロフ) - 更新楽しみにしております。 (2022年11月16日 12時) (レス) @page31 id: 9534e4617e (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐 - この小説大好きですっ！！もうめちゃくちゃ感動できます！！更新楽しみにしてまーす！ (2022年5月25日 19時) (レス) @page31 id: 8d5c2ab10a (このIDを非表示/違反報告)
no_(プロフ) - この作品がとても大好きです。更新されるまで待ってます。 (2022年5月15日 17時) (レス) id: c80cd65ba9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あたた | 作成日時：2021年9月25日 18時
