第88話 Cry ページ41
*
八「あ、A!
新しいの買ってきた──って、オイ!!」
柚「A!?どこ行くの!?」
八戒がすごい豪華なフルーツバスケット持ってたとか今はこの際どうでもいいし、目にも入ってすらなかった。
ただ万次郎に言われた病院に向かって走った。
今回に限って遠いのは何故?
早く、早く行って確かめたいのに。
貴「(───ッ、エマッ…!)」
何も考えずにただ走った。
否、何も考えたくなかった。
阿佐ヶ谷病院に着いた時にはもう日が陰ていた。
病院の前に着くと地に伏せている万次郎と泣いているタケミっち、立ちながら静かに涙を流しているドラケンの姿だった。
貴「……全く何してんの」
ド「A…」
タ「Aちゃん…ッ!」
なんで2人とも私の顔みてますます泣いてるの。
だがそれはきっとエマの為に流してくれた涙だ。こんな状況だがとても愛おしいものに感じた。
恐らくドラケンに殴られたのであろう、気絶している万次郎の傍で膝を折る。私が万次郎の頬を撫でれば光のない大きな目がゆっくりと開いた。
貴「万次郎、起きれる?」
万「……ウン」
貴「辛い時に1人にしてごめんね
エマの事ありがとね」
万「……ッ、ごめん、A…」
貴「謝らないで
万次郎は悪くないよ」
兄の瞳が潤み始める。
それでも涙を流さないのは他の2人がいるからなのか。
着ていた上着を脱ぐと冷たい空気が肌を刺す。その上着を万次郎の頭に深く被せてやるとぽつりと1粒だけ涙を地に落とした。
貴「…ドラケン
エマの為にありがとね」
ド「……」
貴「タケミっちも早く起きて
身体冷えちゃうよ?」
タ「はっ、はい…」
なんでこういう時私は冷静でいられるのだろう。
自分の事ながら他人事のように考えていた。
万次郎の手を引き、立ち上がらせる。
兄の足取りは覚束無い。
フラフラとどこかへ行ってしまいそうで、繋ぎ止めるように強めに手を掴んで病院の中へ入った。
貴「……タケミっち
万次郎とドラケン見張ってて」
また喧嘩しだすかもしれないからと冗談交じりに言うとタケミっちは強く頷いてくれた。
待合室の椅子に万次郎を座らせてエマの元へ向かう。
看護師さんに案内されたとある一室。
扉を開けると線香の匂いが吹き抜けた。
貴「───…エマ、」
*
1253人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わびすけ(プロフ) - みゆさん» コメントありがとうございます。ノンストップでの拝読お疲れ様でございました!お話が本誌に近付いているということもあり、更新が遅くなっておりますが気を長くしてお待ちいただけますと嬉しいです。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
わびすけ(プロフ) - 通りすがりの佐藤さん» コメントありがとうございます。そのように仰っていただけてとても嬉しいです!これからも今作を温かく見守ってくださいますと幸いです。 (2021年9月21日 11時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - ううううう最高すぎます…今日この作品見つけて、面白すぎてノンストップで最新話まで見ました!!めっちゃ面白くて最高です!!!更新楽しみにしております!! (2021年9月20日 22時) (レス) id: a52571fa0a (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの佐藤 - ぬぐぉぉ…なんだこれ最高かよ…この作品にあえてホント良かったわ〜…これからも頑張ってくださいね〜! (2021年9月20日 17時) (レス) id: fafdf4bfd0 (このIDを非表示/違反報告)
わびすけ(プロフ) - 重岡ゆう毅さん» コメントありがとうございます。台詞に気付いて下さって嬉しいです!イザナと何かしらの繋がりがあったらいいな…と思い組み込みました(^ ^)これからもどうぞ今作を暖かく見守ってくださると嬉しいです。 (2021年9月5日 0時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あたた | 作成日時:2021年8月3日 7時