【東卍】私の幸せ 弐【三ツ谷隆】

第83話 Barometric pressure ページ36

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エ「はーいっ。お茶入ったよー」


貴「お菓子は今日もどら焼きでーす」



万次郎の部屋に入るとソファに座った万次郎、その下の床であぐらをかいて座っているタケミっち、ソファの後ろで背もたれに肘を着いているドラケン。

みんなして何やら神妙な雰囲気だがどうしたのだろうか。とりあえずお茶とどら焼きを置く。



タ「黒川イザナ…何者なんだ…」



タケミっちが静かにそう呟いた。

知った名前に自然と身体がピクリと反応し、なんて言おうか悩んでいるとエマが先に答えた。



エ「…ウチのお兄ちゃん」


万「………」


タ「………」


ド「へ？」



私とエマ以外の3人はエマが言った事を理解出来ていないようで、万次郎が何が？と聞いてくる。



エ「だからウチとAのお兄ちゃんだよ
黒川イザナ」


「「「へ？」」」



褐色の肌に目立つ白髪。
綺麗な紫色の目をしている兄だった。

イザナとは施設に行ったっきり会っていない。
それが何故今になって出てきたのか。



"イ「そのうち…必ず迎えに行く
約束だ。A、エマ」"



名前を聞いたからか幼い頃の記憶が思い出される。
お別れの日にイザナはそう告げて消えた。



貴「………」


エ「ちょっとー！！
マイキーには何度も話したよ！
マイキーにとっても異母兄弟なんだからね！」



そう、私とエマの旧姓は"黒川"だ。
イザナは黒川家の兄。真一郎と万次郎は佐野家の兄。
つまりは黒川イザナは私たちの家族である。


確かにエマは何度も万次郎に言ってたっけな。
万次郎は全然聞いてなかったけど。



タ「あのっ…Aちゃん、エマちゃん？」


貴「なに？」


エ「ん？」


タ「その…お兄さん…
"黒川イザナ"についてなんか覚えてる事ある？」


エ「……さすがにないかなー
ウチら3歳までしか一緒にいなかったし」


貴「…私もー」



思い返せばイザナと私たちは4歳差。S62世代だ。
話な流れから察するに天竺の総長はイザナなのだろう。

…なんで今？なんでまた？
頭がぐるぐる回って気持ち悪くなりそう。



貴「……ちょっと外の空気吸ってくる」


万「…A？」



万次郎が私の名前を呼んだのは聞こえたが気にしている余裕なんてなく、そのまま外に出た。


扉の前で深呼吸し、空を見上げた。

先程まで晴れていた光は隠れてしまっていて淀んだ空気が私の心情を表しているようだった。



貴「……気圧、重いなぁ…」





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