【東卍】私の幸せ 弐【三ツ谷隆】

第61話 Photo ページ14

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換気の為か窓が開いてる家庭科室。
刺繍で使っていた金色の糸が宙を舞う。

肌寒くなってきたなぁ。
少しだけ身を震わせると肩に何か掛けられた。

それは三ツ谷のカーディガンで、あまりにも自然な行動に驚いて掛けてくれた張本人を見る。

 

三「着とけ
少しはマシになるだろ」


貴「ウン、ありがと」


三「おー」



腕を通すと思った以上に大きくて裾から手が出てこなかった。仕方なく袖を巻くって作業を再開する。

風に吹かれるたびに三ツ谷の匂いがする。
落ち着くそれは私の集中力を高める効果があるらしい。



タ「…三ツ谷君ってこわいっスね」


ペ「タケミっちも気ィついたか？」



タケミっちが目を向けるのは廊下。

そこには何を聞きつけたのか大勢のギャラリー。
その視線の先には刺繍に集中しているA。



タ「Aちゃん綺麗だから…」


ペ「分かりやすい牽制だよなァ」


三「オメーらうるせぇぞ」



ギャラリーはしばらく掃けなさそうだ。
そんな会話も耳に入らないくらいに集中していた。


無心で刺繍し続けようやく完成が見えてきた。

背伸びをしようと針をピンクッションに刺すとカシャという機械音。その音の方に顔を向けると携帯を持った三ツ谷。


 
三「集中しすぎな」


貴「……写真撮った？」


三「良いの撮れたワ」


貴「ハイ？」



三ツ谷は満足そうに携帯をポケットにしまう。


最近の三ツ谷おかしいよ…！？
無駄に優しいし！笑顔眩しいし！かっこいいし！
…あれ、今思い返せば昔からでは？

ケガの心配とかいつも1番してくれたし。
落ち込んでる時も一緒にいてくれたし。

そうだ…三ツ谷は面倒見の鬼だった…
変に意識しておかしいの私の方じゃん……



三「タケミっちー
待ち受けってどうやって設定すんの？」


貴「それはさすがにおかしいと思うな！？」


三「八戒も待ち受けオレだし
おかしくはねぇだろ？」


貴「八戒は三ツ谷大好きだからでしょ…！？」


三「じゃあ問題ないな」


貴「は、」



いたずらっ子のように笑う三ツ谷。
この時の私はそれはどういう意味か聞けなくて微かな期待を高めただけだった。


その日から渋谷第二中学校にはある噂が流れたという。

"三ツ谷隆には彼女がいるらしい"

後日ペーやん伝でそれを聞いた時はもう二度と行かないと誓った。



三「安田さんが刺繍教えてくれって」


貴「……安田さん好きだけどイヤ
三ツ谷のせいだから三ツ谷が謝って」


三「なんで」





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