Prolog ページ1
*
「いい?A、エマ
ママはこれからとってもとっても
遠くに行かなきゃいけないの
だから2人はじいじの家に行ってて頂戴」
見たことのない立派な家の前でお母さんに突然そう言われた。いつもより唇が真っ赤でお花の匂いが風になびいて鼻腔をくすぐる。
隣にいる双子の妹、エマは繋いでいる手の力を少し強めてお母さんに問うた。
エ「いつ迎えにくるの?」
「……用事が終わったらね」
淡々とそれだけ答えると私たちをおき、小さめのボストンバッグ片手にお母さんは立ち去った。
きっとこれでお母さんとはさよならだ。
お母さんの答えは嘘だと幼い少女の頭でも理解できた。
悲しくはない。
だけど嬉しくもない。
ふと隣を見るとエマはお母さんの後ろ姿を泣きもせず見ていた。
きっとエマもお母さんの気持ちを理解したのだろう。
貴「エマ、行こう」
エ「……うん」
立派な家の門をくぐりインターホンを押す。
数秒待つと玄関の引き戸が開かれ1人の老人が出迎えてくれた。
私たち2人を見て、驚く素振りもなく訊ねられる。
「Aとエマだな?」
問いに対してこくりと頷くと満足げによく来たと頭を乱暴に撫でられた。豪快な笑い方をするこの老人が私たちのおじいちゃんらしい。
貴「黒川Aです」
エ「黒川エマです」
「「よろしくお願いします」」
深くお辞儀をするとおじいちゃんは複雑そうな顔をしたあと優しくまた頭を撫でてくれた。
そのまま居間へ案内され出されたお茶を一口流し込む。
爺「今日から"佐野"と名乗れ
佐野A、佐野エマだ」
私とエマ、一人ずつ指をさされて告げられた。
お母さんと唯一繋がっていた名前も変えるのか。
最初はそう思った。
爺「オマエたちは今日から家族だ」
優しく、そして少し悲しそうに微笑むおじいちゃん。
それを見たら名前なんてどうでもよくなった。
そうだ。お母さんは私たちを
お母さんとの過去よりおじいちゃんとの未来のほうが絶対に幸せそうだ。
貴「佐野Aです
これからお世話になります」
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わびすけ(プロフ) - あかさたなはまやらわさん» 原作、場地くんファンの皆様にご不快な思いをさせていたことになりますのでご指摘とても助かります!ありがとうございます!今後とも今作をよろしくお願いします。 (2021年10月31日 13時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
あかさたなはまやらわ - この作品最高です!で,気づいちゃったのですが…2話の場地くんを紹介するところで場地が馬地になってました,,細かくてすみません (2021年10月30日 22時) (レス) @page4 id: 5ef1823fc7 (このIDを非表示/違反報告)
わびすけ(プロフ) - 漆Pさん» 初めまして。そのように仰っていただけて嬉しいです!三ツ谷の登場回これから増やしていく予定ですので楽しんでいただければ幸いです。これからもどうぞ今作をよろしくお願いします! (2021年7月28日 8時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
漆P(プロフ) - 初めまして!小説拝見させてもらってます!毎回三ツ谷がカッコよすぎて読んでるこっちもドキドキしてます(*´v`*)こんな楽しいお話書いてくださりありがとうございます!無理なく更新がんばってください! (2021年7月27日 15時) (レス) id: 436ede0cdd (このIDを非表示/違反報告)
わびすけ(プロフ) - 無気力に自信が有る人さん» コメントありがとうございます。ご期待に添えるように頑張ります! (2021年7月16日 14時) (レス) id: efc0380dc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あたた | 作成日時:2021年7月10日 21時