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まるでメンバーたちと一緒にいるような、心許せるひとと一緒にいる時特有のふわふわした気持ちに逆らわずに、ゆったりとした時間を受け入れていたわたし。
じっとれんくんに見つめられて、その視線から逃れられなくて。右頬に添えられた手に戸惑いながらも思わず名前を呼ぶとぎゅう、と抱きしめられた。
目黒「…Aちゃん」
「…ん?」
目黒「俺、Aちゃんのこと大事にしたいんだ」
右頬に添えられていたれんくんの手は、今わたしの背中をゆっくりとさすっている。
目黒「………ウギョル、まだ始まったばっかりだけど、がんばろうね」
「あ…うん、がんばろう…?」
わたしの返事を聞いてゆっくりと離れていくれんくん。
向き合ったときの彼の表情が、わたしのデビューが決まったときに少しだけ疎遠になってしまったとある彼の表情と似ていて。
離れてほしくない、と思ってしまった。
「……わたしたち、まだ初めましてからほんの少ししか経ってないでしょ?」
目黒「…うん、そうだね」
「なのに、なんでこんなにれんくんのこと大事に思うのかな……ウギョルマジック?」
よくある話だ。ドラマや映画で恋人同士を演じた方たちが現実でもお付き合いを始めて、それから間もなく、まるであれもみんながテレビで見ていた幻想だったんだよ、自分たちも知らない間にその幻想に迷い込んでしまったんだ、とでも言いたげに破局するなんてこと。
ウギョルも、きっとドラマとか映画と同じようなものなのだ。
目黒「…うん、……うん。そうかもね。ウギョルマジック、かも」
同じようなものだと思うのに。わかってるのに。
今この空間も、ただのわたしたち2人の気の迷いでうまれたものだってわかっているのに。
ウギョルマジックというわたしの言葉に同意するれんくんに、どうして悲しくなっちゃうんだろう。
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作者名:リン | 作成日時:2022年8月5日 6時