△43 白無垢で連れ出して ページ44
わたしは白無垢、善逸は黒の袴のままで、宴会をぬけだした。
式をあげた神社は、かつてわたしたちが奉公したお屋敷から近かった。
あれから20年が経つんだ、ボロい廃屋と味気ない庭に化していた。
白無垢が汚れないように気をつけながら、うろつく。
ちいさな格子の窓から太陽がさしこんで、空気中の埃が光って見える、ススまみれの台所。
昼となく夜となく薄暗いここは、わたしたちの思い出の場所。
「……このへんで、お握り、作らされたっけ」
わたしたちとは縁のない遠足とやらのために、奥さんに言われて、朝早くから作らされた。
「そうそう。
で、こっちの方で、汁物とか作ってた」
「よく覚えてるね、善逸」
「そもそも忘れたことがない」
そっか。
例によってひとりで仕事をまかされる善逸と、仲のいいわたし、くだらないことを喋りながらお握りを作ってた。
再現したくなって、真っ白の裾をおさえつつ、地面にしゃがむ。
善逸はイタズラっぽく笑って、それに付き合ってくれた。
視界をさげると、善逸の袴がなじむくらい真っ黒の世界に沈む。
闇のなかでも、雷の呼吸の象徴みたいな金髪は、善逸のわらう顔は、綺羅綺羅と見えるよ。
「……A、Aちゃん、我妻Aちゃん、
俺はね」
天井だけがほんのり明るいような、真っ暗な世界のなかにふたり。
湿気った土のにおい。
壁の穴で、虫がしずかに這いまわる気配。
こんな場所で、わたしたちは初恋をささげた。
「じいちゃんに会えるまで、俺の人生は、俺の境遇は、しあわせなものだったとは言えないけどさ……
だからこそAちゃんに会えて、Aちゃんが俺を選んでくれたなら、まあよかったんじゃないかな、そう、思えてる」
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なーこ - ほんっとにこのお話大好きです!!定期的に読みたくなってまた読みに来ました!!!!最高です!!どの作品よりも好きです!こんな素晴らしい作品を作って下さりありがとうございます!!! (2022年12月12日 20時) (レス) @page47 id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
めがね - この作品何回読んでも何回もときめくから不思議だと思います。好きです (2022年10月18日 1時) (レス) @page47 id: cb7157b0f2 (このIDを非表示/違反報告)
クロイルカ - あっ、_:(´ཀ`」 ∠):グハッ (2022年8月25日 17時) (レス) @page47 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
カノカノ(*´∀`*) - 元々、鬼滅の刃の作品はあまり、見ないけど、私が見てきたなかで、1番好きです!他の作品なども、頑張って下さい! (2021年4月10日 15時) (レス) id: fb067314f3 (このIDを非表示/違反報告)
Links - はーーーい!499を500にした(いちおー)女の子のLinksちゃんだお☆........すいませんふざけました。とってもいい話ですね!僕は感動しました。それで感動しまくって発狂してたら親に煩いと怒られました(笑)他の作品も楽しみにしています! (2020年5月7日 0時) (レス) id: 6a54b9078c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:間宮 | 作成日時:2020年2月16日 19時