善逸とガチ恋したいヤツちょっと来い【鬼滅の刃】

△30 だって恋の季節 ページ31

一度鬼になったわたしだけど、もうすっかり人間に戻った。

血鬼術なんか無理。


「使えねー」
と言った獪岳は殴っといた。



前より幾分かとんがった歯だけど、3日すれば違和感はなくなった。



変化があった部分と言えば、傷の治りが異様にはやくて、あと、階級が柱レベルになると、鬼の気配に感じられてしまうところ。

いいのやら悪いのやら。




チリリン。
チリリン。


風鈴の音に、意識が水底から浮きあがる。



この世にこんなに綺麗な青があるんだ、贅沢な夏空。

鳴りやまない蝉時雨。ひまわり畑。

火照った身体を癒してくれる、畳の心地よい温度。



「……犯人はお前か」



どおりで暑かったんだ、わたしのお腹を枕にして、甚平を着た善逸が寝ていた。


かわいい顔が赤らんでる、おでこには汗をかいていた。


チリリン。


縁側の外に投げ出したままの足を、ぶらぶらさせる。おやつはかき氷がいいなぁ。





「Aちゃん、何考えてるの？」


起きた善逸が、畳のうえで、顔だけ横にむけてくる。


「……しあわせだなぁって」



善逸は笑って、こんなに暑いのに、わたしの手を握ると、自分の胸に引きよせた。



触れたところに熱がこもり汗をかく、だけど離れることはなくて、そのまま、また琥珀を閉じこめる。



わたしもつられて、外界との、永遠に続いてほしいとすら思う15歳の夏の世界とのつながりを断つ。




チリリン。

チリリン。




「忘れじの

行く末までは

難(かた)ければ

今日を限りの

命ともがな」






一生きみだけだと

あなたは誓うけれど

ひとの気持ちは移ろうわ

だからわたしは今日しにたい

最高に愛されたまま




こんなに激重い女になっちゃたの、誰のせいだと思ってんの。


のんきな寝顔がにくくて、金色の頭を撫でた。

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