△25 しあわせの音 ページ26
「俺、Aちゃんなら食われていいや」
いつかの朝、わたしと素肌で抱き合ったまま、善逸はそんなことを言う。
「ほんとかー?」
鬼嫌いで、誰よりもこわがりで、命を惜しんでるくせに。
クスクス笑ってると、
「ああもう、そんな口、ふさいでやる」
とくちびるが押しつけられる。
じゃれあって、恥ずかしくなってきたわたしは
「……忘れじのー」
と、ひとつの歌を引っ張り出してくる。
「忘れじの
行く末までは
今日を限りの
命ともがな」
「今度の歌はどんな意味?Aちゃん」
と、わたしの黒髪を撫でて、たずねてくる。
善逸、それはね。
一生きみだけだと
あなたは誓うけれど
ひとの気持ちは移ろうわ
だからわたしは今日しにたい
最高に愛されたまま
△▽
わたしは今、夏祭りの途中で鬼を探しに行っていつまでも帰ってこないじいちゃんが心配になって、
「ここで待ってろ」と言われたのを無視して、コッソリ鬼を探しにいって____
今、鬼にされている最中だ。
深い森のなかの月影、見えなくたって鬼が笑ってるのがわかる。
「アッ……ガアアアアア!!
ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!
アアアアアアアアア!!!!」
ひとらしき感情が消えていく。
着物を裂く、胸もとから黄色のきんちゃくがこぼれる、とりだしたるは藤の花。
手がふるえる。まきちらす。
全身が拒否してる。
当たり前だ。
神さまは、そう簡単に毒を飲めたりしない風に人間をつくった。
わたしはそれに逆らおうとしてる。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ーッ!!!」
食道に手ごとつっこんだ。
香り立つあまい匂い。胃液が逆流する感覚。
「はは!!ははは!!!
その状態で藤を食うとは!!!最後に名くらい聞いてやる!!!名のれ、女!!!」
「……わ、わ……たし、は……A!!」
捨て子のわたしは名字を持ってなかった、だけど今は、名字をくれるひとがいる。
「我妻A!!!」
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なーこ - ほんっとにこのお話大好きです!!定期的に読みたくなってまた読みに来ました!!!!最高です!!どの作品よりも好きです!こんな素晴らしい作品を作って下さりありがとうございます!!! (2022年12月12日 20時) (レス) @page47 id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
めがね - この作品何回読んでも何回もときめくから不思議だと思います。好きです (2022年10月18日 1時) (レス) @page47 id: cb7157b0f2 (このIDを非表示/違反報告)
クロイルカ - あっ、_:(´ཀ`」 ∠):グハッ (2022年8月25日 17時) (レス) @page47 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
カノカノ(*´∀`*) - 元々、鬼滅の刃の作品はあまり、見ないけど、私が見てきたなかで、1番好きです!他の作品なども、頑張って下さい! (2021年4月10日 15時) (レス) id: fb067314f3 (このIDを非表示/違反報告)
Links - はーーーい!499を500にした(いちおー)女の子のLinksちゃんだお☆........すいませんふざけました。とってもいい話ですね!僕は感動しました。それで感動しまくって発狂してたら親に煩いと怒られました(笑)他の作品も楽しみにしています! (2020年5月7日 0時) (レス) id: 6a54b9078c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:間宮 | 作成日時:2020年2月16日 19時