△9 抱きしめてよ ページ10
「……俺のこと、覚えてる?」
わたしの両手を握ったまま、上目づかいに聞いてくる。もう。めんこいなぁ。
「わすれたことがないよ、善逸」
善逸。
あがつまぜんいつくん。
逸するまでの善。
やさしすぎるきみにぴったりな名前。
顔のまわりにぱっと光が散るみたいに笑うところも、なんら変わらなくて。
「……ぜん、いつ」
なつかしい顔を見たら、ふつりと緊張の糸が切れた。ぬるいものが顎をつたう。
「Aちゃん……!?」
わたしは善逸に抱きついた。
ハッと息をのむ音が耳元で聞こえた。善逸の耳たぶはまっかっか。
よくわたしに抱きついていたくせに、今ばかりは手のやり場に困ってるみたい。
「……抱きしめてよ」
「は、はいっ!!!!」
鼓膜破りちらかしそうな返事をすると、わたしを掻き抱いた。
ぎゅうと、腕のなかに閉じこめられて、ずいぶん背格好が変わっているのに気がつく。善逸の匂いがする。嗅いでいるだけでしあわせになれる匂い。
「わたし、鬼に、帰るとこ、なくされちゃった」
それで全部を察したのか、記憶より広くなった手がわたしの背中をさすってくれる。
善逸はわたしが泣き止むまで、ずっとそうしてくれていた。
「あのねAちゃん、帰るところは、あるよ」
「……どこに」
「ここに」
善逸は両手を広げた。
「今日からここがAちゃんの家だよ」
わたしの初恋は色褪せてなんかない。
今も色をもって息づいて、雷鳴みたいに叫んでいるんだ。
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なーこ - ほんっとにこのお話大好きです!!定期的に読みたくなってまた読みに来ました!!!!最高です!!どの作品よりも好きです!こんな素晴らしい作品を作って下さりありがとうございます!!! (2022年12月12日 20時) (レス) @page47 id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
めがね - この作品何回読んでも何回もときめくから不思議だと思います。好きです (2022年10月18日 1時) (レス) @page47 id: cb7157b0f2 (このIDを非表示/違反報告)
クロイルカ - あっ、_:(´ཀ`」 ∠):グハッ (2022年8月25日 17時) (レス) @page47 id: dc34629a9d (このIDを非表示/違反報告)
カノカノ(*´∀`*) - 元々、鬼滅の刃の作品はあまり、見ないけど、私が見てきたなかで、1番好きです!他の作品なども、頑張って下さい! (2021年4月10日 15時) (レス) id: fb067314f3 (このIDを非表示/違反報告)
Links - はーーーい!499を500にした(いちおー)女の子のLinksちゃんだお☆........すいませんふざけました。とってもいい話ですね!僕は感動しました。それで感動しまくって発狂してたら親に煩いと怒られました(笑)他の作品も楽しみにしています! (2020年5月7日 0時) (レス) id: 6a54b9078c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:間宮 | 作成日時:2020年2月16日 19時