【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ42)

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第三十九話ページ42

雪奈side

千羽｢・・・今日、広間に集まっていた頭領の誰かが、人間が引き起こした争乱に巻き込まれてーーそのまま、命を落とすという夢だったわ。・・・しかも、そう遠くないうちに｣
雪奈｢ーー！｣

私は雷に打たれたように立ちすくむ
鬼というのは人間よりもずっと強靭な身体を持っていると言われていて、病にも強い
寿命が近づいた年配の鬼ならともかく、若い鬼が命を落とすというのは考えられない事態なのだ
汐爺、琴爺、月島爺はもちろんの事、今日会ったばかりの千歳や千耶、千岳さんや秦さん、それに可能性のあるAも・・・
そのうちの誰かが近いうちに命を落とすなんて、信じたくない
だけど、八瀬姫の予言が外れたことなど今まで一度たりともなかった
だが姫の話は、これだけでは終わらないらしい

千羽｢しかも、彼らが戦っていた相手はーー｣

意を決して発したらしい言葉を、彼女はなぜか飲み込んでしまう

雪奈｢【戦っていた相手はーー】誰なのです？｣

私は先を促したけど、彼女はゆるゆると首を横に振る

千羽｢・・・いえ、何でもないの。とにかく、彼らの命を守るためには何としても彼らを止めなければ。協力してくれるわね？雪奈？｣

姫は私の手を取り、真剣な眼差しで私の瞳を覗きこみながら尋ねてきた

雪奈｢もちろんです。ただ・・・この件についてAは知っているのですか？｣

私は彼女に尋ねると姫はゆっくり頷いた

千羽｢ええ、知っているわ｣
雪奈｢じゃあ・・・｣

私が言葉を発しようとした途端、続くように姫は口を開く

千羽｢でも、断られてしまったわ｣
雪奈｢・・・そうですか｣

姫は落ち込んだような表情をする
どうやら、能力を使ってくれなかったようだった
Aには姫と同様、特異な力を持っているのだが、本人はなかなかそれを使うことを許してくれないのだ

千羽｢あの子の気持ちも分かるわ。もし、自分の能力を使ってしまったら、この先どうなるか怖いということも｣

姫は悲しげな顔をする

雪奈｢・・・私にはそのような力はありませんが、何となく分かります。あの時のAの表情は頭から離れません・・・｣

初めて自分の能力を貸して欲しいと頼んだときのAの顔は、まるで何かに怯えているかのような表情だったから・・・