【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ5)

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第二話　ページ5

雪奈side

程なくして私は、人里と八瀬の里を隔てる結界へとたどり着いた

雪奈｢・・・・！｣

鳥居へ近づこうとした矢先、何者かの気配を感じて足を止める
木陰に身を隠して辺りの様子を窺って見るけど、人影は見当たらない

雪奈(どういう事？姫の召集に応じてやってきたのなら、姿を隠す意味などないはずなのに。もしや、来客ではなく、姫に害をなす刺客？)

辺りの様子を窺いながら、私は近くに身を潜めている何者かに呼びかける

雪奈｢そこにいるのは何者ですか？返事をしなさい｣

私に悪戯をする絢華なのかと心のどこかで思っていたが返ってくるのは、寂しげな葉ずれと風の音だけ

雪奈(もし来客ならば、何らかの返答をするはず。そうしないということはーー)

私は刀の柄をかけて、相手が動くのを待った
するとーー

ガサッ

大きな人影が呼吸する間すら与えてくれずに間合いを詰めてきた
絢華ではなく男だった
そして突進の勢いのまま、棒状の得物を全力で振るってくる

雪奈｢くっ！｣

キィン！

間一髪
素早く抜刀した刀で、殴撃を受け止める
彼が振るっているのは、鞘に納められたままの刀剣だった

？１｢思ったより、反応いいじゃねえか。そうじゃなきゃな！｣

見覚えがない顔だった
明らかに、八瀬の里に住む者ではない
赤い瞳に好戦的な光を宿しながら彼は嬉しそうに口角を引き上げ、刀を握る手に力を込めた

雪奈｢ぐ、うっ・・・！｣
？１｢女にしちゃ、そこそこの力だな。だがーー！｣

細い腕からは想像できないほど強靭な力でそのまま押し切られそうになる

雪奈(駄目。このまま鍔迫り合いを続けても、勝てはしないーー！)

そう思った私は鞘に込められた力をうまく受け流し、側方へ飛び退く

？１｢逃がすか！｣

彼は鞘に納まったままの刀を構え、再び迫ってくる
私は着地と同時に足元の枯葉を掴み、彼の顔めがけて投げつけた

？１｢くっ！｣

彼は鞘を大振りにして投げつけられた葉を薙ぎ払うがその瞬間にはもう、私は大きく飛び退き、木陰に身を潜めていた

？１｢くそっ、どこに行きやがった！｣

彼は大声を上げながら、近くの茂みを鞘で薙ぎ払う
私は足元に転がっている小石を拾い、離れたところにある茂みへと投げ入れた

？１｢そこか！｣

その音を聞きつけ、彼は茂みを薙ぎ払う

？１｢くそっ、ここじゃねえ・・・どこに行きやがった？｣

今度は、彼の死角になっている場所にある茂みへと木の枝を投げ入れる

？１｢ふん、撹乱か。隠れてないで出てこいよ！｣