【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ39)

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第三十六話ページ39

雪奈side

千羽｢私は、そういう話をしているわけではありません。生存の為、一族の安泰の為に人間と最低限の関わりを持つ事まで禁じているわけではないのです。ただ、政に関わったり、人の世の歴史を大きく動かすようなことをしてはならないと言っているのです｣

語気鋭く放たれる姫の言葉に、その場にいる全員が戸惑った様子で顔を見合わせる
彼らがこういった反応をするのも、無理はないのかもしれない
姫がこんなに余裕をなくしているところを目にするのは、私もこれが初めてだから

秦｢・・・いくら何でも、そんな真似をする不心得者はいないはずですがね。もしいたら、その者が手を貸している大名は、とっくの昔に天下人になっているはずですから｣

物怖じしない秦さんが茶化したけれど、他の皆の表情は浮かない
千耶は乏しい表情ながら、姫をじっと睨むように見つめて問いかける

千耶｢我々にその質問をするという事は、八瀬姫は、我々を疑っていると解釈しても構わぬか｣
千羽｢それは・・・｣

さすがに面と向かって【疑っています】と答えるのはためらわれるのか、姫は無言になってしまう

秦｢どちらにせよ、十鬼衆全員に召集をかけるような内容の話だとは思えませんがね。久しぶりに都見物もできて、おまけに有名な絵師にも会えたので、その点では有意義ではありましたが｣
千歳｢・・・姫からの話ってのは、それだけなんだな？んじゃ俺は、そろそろ里に戻らせてもらうぜ｣

千歳がまず立ち上がり、千耶がそれに続いた
秦さんも煙草を吹かしながら、ゆったりとした足取りで広間を出て行く

千岳｢俺も、野暮用をおおせつかってるからよ。悪いが、これで失礼させてもらう｣

千岳さんは折り目正しく姫に一礼した後、背を向ける
だけど姫はーー

千羽｢・・・警告します。もし人間と関係を持っている者がいるなら、即刻、関わりを絶ちなさい｣

尋常ではない気迫で今一度、告げた
穏和な性格の姫がこういった物言いをするなんて、あり得ない事。

雪奈(という事は・・・何かしら確信があって、警告しているはず)

場に満ちる空気が、緊張の度合いをさらに増したその時ーー