【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ36)

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第三十三話ページ36

Aside

同刻、仕事のため私は家に戻り作業をしていた
姫様からのお告げは先程聞いたので、わざわざ八角堂まで戻る必要はなくなったのだ

A｢人間の戦、ねえ・・・｣

姫様の口から出た【人間】という言葉が脳裏に浮かび上がる
まさか、今回のお告げに【人間】が関わってくるとは思わなかった

A｢確かに人間は強欲な上、己の幸せのために戦を起こすほど冷酷な奴だ｣

爺様方が姉さんに言いたくはない気持ちは分かるけど・・・
頭領ならば今の人間の世を知っとかなければならない必要がある
それに姫様の話からだと、何だかまるで十鬼衆の誰かが人間と関わっているように聞こえた

・・・・人間と関わっている？

A｢まさかとは思うけど・・・十鬼衆の中に人間と関わっている者がいるなら・・・｣

自分の独り言に私は筆を持っている手を止め、眉をひそめた
気持ちのせいで全く筆が進まず、座敷から立ち上がった

A｢・・・外に出てこよ｣

夜風に当たりに行こうと私は家を出た
外の冷え込みは想像以上に厳しく、吐く息が煙のように真っ白になる

A｢さすがにまだ一月だから寒いな｣

両手で腕をさすりながら、八角堂付近まで歩く
すると、建物の入口辺りで面識のある人物の姿が目に入る

A｢千耶殿？｣

そこにいたのは、夜空を見上げている千耶殿だった

A｢何してんだろ？｣

声をかけようとした瞬間

千耶｢誰だ？｣
A｢！？｣

私の気配に気付いたのか、千耶殿は身構えながらこちらを見ていた
さすが陸奥六郡の頭領を務めるだけの勘はある

A｢私ですよ。絢華です｣
千耶｢・・・お前か｣

茂みから姿を現した私を見て千耶殿は構えを解く

A｢こんなところで何してるんですか、風邪ひきますよ？｣
千耶｢お前もだ。こんなところで何をしている、仕事はどうした？｣

私の質問の前に千耶殿は問い返してくる

A｢その仕事の休憩に夜の散歩をしていたんです。夕方から作業してたので外の空気を吸いたくて・・・｣
千耶｢そうか｣

彼は視線を地面にぶつける

A｢で、千耶殿はこんなところで何をしているんですか？｣
千耶｢別に、夜風に当たっているだけだ｣
A｢ふーん・・・｣

私は適当に返事をする
だが、よく見ると千耶殿の顔は何か不快なことを聞いたような表情だった