【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ30)

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第二十七話ページ30

雪奈side

千羽｢頭領として未熟だから恋愛や結婚をしちゃいけないって、誰が決めたの？むしろ未熟だからこそ、相手の男性に成長させてもらったり、お互い磨き合ったりできるんじゃない｣
雪奈｢そうでしょうか・・・｣
千羽｢そうよ｣

昔から姫はこうして私を部屋に呼んで髪をすいてくれたり、化粧をしてくれたりする
私は姫にお仕えしている立場なのだし、分別のない接し方をするのは良くないと思うのだけど・・・・
正直、姫に髪をとかされるのは、とても気持ちがいい

雪奈(姫と一緒にいるのは、居心地がいいというか・・・もしかしたら姫も、そう思ってくれているといいのだけれど)

やがて姫は私の髪に簪を挿し、静かに立ち上がった

千羽｢はい、可愛くなったわよ。これなら皆、あなたに一目惚れ間違いなしね｣
雪奈｢ありがとうございます・・・｣

姫の簪をいただくのは、分を過ぎる事のように思えた
それでも、姫が喜んでくれるなら受けてもいいのかもしれない
そう思った時だった
不意に、姫が眉を寄せながらポツリと漏らす

千羽｢・・・その簪、私だと思って大切にしてね。本当は、あなたがお嫁に行くまで傍に付いててあげたいんだけど・・・｣
雪奈｢姫・・・？｣

言葉に込められた不吉な響きが、胸の奥に妙な引っかかりを作る
十鬼衆全員に召集をかけるのも、十数年ぶりだというしーー
もしかしてこれから、何かが起こるのだろうか？姫は皆に、何を伝えようとしているのだろう？

雪奈(思い過ごしならば、それでいい。でももし、そうじゃなかったら・・・)

雪奈｢あの、姫ーー｣

不安に駆られ、そう呼びかけた時だった

A｢姫様、姉さんはまだこちらにいらっしゃいますか？｣

戸の向こうから、絢華の声がかけられた

雪奈｢え、ええ。いるわよ！｣
A｢あ、それはよかった。琴浦爺様からの言伝で夕飯の支度を手伝ってくれとのことです。どうも、手が足りないようですよ｣

夕飯の支度を手伝って欲しいと頼んできた
けれど・・・

雪奈｢絢華・・・あの・・・それが｣
A｢え？もしかして大事な話でしたか・・・？だったらすみません・・・｣

私はじっと姫の顔を見つめたが、姫は優しく微笑んで私を送り出した