【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ21)

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第十八話ページ21

雪奈side

千岳｢そういや、自己紹介がまだだったな。俺は十鬼衆の一人、【漂泊の者】千岳だ。涼森家頭領、雪奈だな。よろしく頼む｣

漂泊・・・？
聞き慣れない通り名だった
地名なのかどうかも分からない
それに、境界でのやりとりを知っているのか、それとも十鬼衆だから知っているのか、涼森の姓は知られているらしかった

雪奈｢涼森家の頭領、雪奈です。今後とも宜しくお願いします｣

隠しても仕方が無いので、素直に姓を名乗って挨拶を交わす
そんな私の対応が気に入ったのか、千岳さんは頬を緩めた

千岳｢それより、すまなかったな。こいつら、悪い奴じゃないんだが調子に乗りすぎるところがあってな｣
雪奈｢私は大丈夫です。それより、一番機嫌を悪くしたのは絢華のほうで・・・｣
千岳｢絢華？｣

私の目線を辿るように千岳さんは彼女の方へ目を向ける

雪奈｢絢華｣

すると絢華は私の声に気づき、私達の方へ歩み寄ってきた

A｢何でしょうか姉さん？・・・！｣

絢華は千岳さんに気づいたのか、すぐに頭を下げた

A｢自己紹介が遅れたこと、失礼しました。私、八瀬の里にお世話になっている絢華と申します。どうぞ宜しくお願いします｣
千岳｢ああ、俺は十鬼衆の一人、千岳だ。宜しくな｣

二人はお互い顔を見合わせる

千岳｢それより、さっき雪奈に聞いたんだが千歳たちに何かされたのか？｣
A｢・・・・｣

気に障ったのか、絢華は不機嫌な顔になり千歳を軽く睨んだ
その後、深いため息をつき千岳さんに向き直った

A｢ここに来る前、近くの水源にいた私にあの者が急に襲ってきたんです。幸い、私も護身術を心得ていたので応戦できましたが、最悪なことに半刻もかけて描いた絵を踏まれたんです｣

もう一度千歳の方を睨むと千歳は慌てたように絢華に振り向いた

千歳｢そ、それは悪かったって言ってるだろ！てか、だいたいお前があそこに絵を置いとくからいけないんだ！｣
A｢襲ってきたことは許します。ですが、絵を踏んだことだけは許しません。本当はあの絵の中に八瀬姫様に頼まれた絵も入ってたんですよ｣

その言葉を聞いた途端、千歳は顔を青くした

A｢それに、姉さんを襲ったことはもってのほか。もし、姉さんの綺麗な顔や腕が傷つけてたなら私はこの場であなた達の首を飛ばしてたかもしれませんね｣
千歳｢頼むから勘弁してくれ！｣

絢華の絵を踏んだことがどれだけの狼藉だったのか千歳は理解したようだ