【十鬼の絆】～旋律唄～ (ページ17)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:36,222 hit

第十四話ページ17

千耶side

先程から茂みの中であの【絢華】という女子の剣術を拝見していた
その剣筋は俺が思った以上に優れており、力も十分と言ってもいいほどあった
だが俺から見れば、かの者からは何か物足りなさを感じた

雪奈｢早く止めないと・・・！｣

雪奈が急立ち上がると同時に俺も立ち上がった

雪奈｢そこまでにしなさい。【絢華】｣

かの者の声で絢華という女は千歳の胸ぐらから手を離した
手を離したのはいいものを、絢華という女はまだ雪奈を睨んでいた
すると

A｢姉さん！聞いてくださいよ！こいつ、私が気持ちよく歌っている最中に襲ってきて、おまけに先程描いた絵まで踏まれたんですよ！｣

獣のような鋭い眼光から一瞬で涙目に変わった

千歳｢ったく、女が男の胸ぐら掴むとか驚いたぜ｣

千歳は服装を整えながらブツブツと文句を言っていた

千耶｢全く。情けないことだ｣
千歳｢情けないって・・・！あ、あれはたまたま俺の調子が良くなかっただけだ！万全だったらあんなことにはならねえよ！｣

どこまで言い訳するのやら・・・

A｢おい。私が手掛けて描いた絵をどうするつもりだ？｣

絢華は再び千歳を睨んだ

千歳｢あ、あれは悪かったって！・・・てか、お前もあそこに置いとくなよ！｣
A｢は？急に襲ってきたのはそっちじゃない！｣
雪奈｢絢華！｣

雪奈は絢華の頭に拳骨をする

A｢・・・すみません｣

頭を押さえながらも雪奈に謝った
本当にかの者は表情をよく変えるな

雪奈｢絢華、この者達は十鬼衆の頭領の方よ。わざわざ遠くから来ていただいたのだから挨拶しなさい｣
A｢え・・・？｣

雪奈に言われ、絢華は俺たちを凝視した
まるで信じられないという顔つきだった

A｢そ、そうだったんだ・・・私ったら敵だと思ってなんてことを・・・・！｣

すると絢華は不意に真面目な顔で俺たちに向き直った

A｢お初お目にかかります。私、八瀬の里に暮らす絵師の、絢華と申します。先程のことは大変失礼いたしました｣

さっきの生意気な口からは想像できないほど、丁寧な口調で絢華は自己紹介と詫びを入れた

千歳｢なーに、先に仕掛けたのは俺だっていうのに詫びるなんておかしいだろ。俺は西海九国の鬼頭、千歳だ｣
千耶｢同じく、陸奥六部の鬼頭、千耶だ｣

俺たちも軽い自己紹介を絢華にした
それにしても興味深い者だ
俺はかの者を見てそう思った