兎と仔犬 (ページ6)

今日:10 hit、昨日:8 hit、合計:478,331 hit

6 ページ6

V side

これはデビュー前の話。

ある日突然俺たちのダンスクラスに女の子がやってきた。

女の子にしては背が高くて、黒髪で低くポニーテールをしている。
挨拶の時、深く頭を下げたけた彼女は1ミリも笑わなかった。

ダンスの上級クラス。

この子は俺たちに着いて来れるのか？
誰もがそう思っていた。

でも、あっという間に振りを覚えたし、軽々踊りこなしいった。

それに加え、あまり笑わないクールな存在。

『なぁ、あの女の子日本から来たんだって』

『PDニムが直々にスカウトしたんだろ？ダンスやばいって』

『もうデビュー組に入ってるらしいよ？韓国語も話せないのに』

『日本人のくせにな』

いつしか本人の目の前で、クラスの人達が悪口を言うようになってきた。

でも、涙１つ見せない。

言葉がわからないから、本人は気づいていないのか…

その日は個人練習がしたくて早めに練習に来た。

一番乗りだと思っていたのに、練習室で汗だくになっていたのはあの女の子。

うわぁ、すげぇ。

壁にもたれかかってその様子を見ていると、踊り終えた女の子が振り返って「うわぁ！！！」と声をあげた。

あれ、気づいてなかったの？

V「かっこいい！！拍手！！！」

「…ありがとうございます」

V「君ダンス上手いよね。何年くらいやってるの？」

「10年以上？」

V「へぇー！それは凄い！」

「ありがとうございます…」

表情１つ変えずに答える女の子。

褒めてるんだけどなぁ。

V「俺、テヒョン。よろしく。仲良くしてね！」

よくわからないけど、純粋にこの子と仲良くなりたかった。
面白い子だと思うし。

「私は…Aです。いいんですか？私は日本人です。みんなから嫌われてる」

V「へ？」

悪口を言われていることに気づいてないと思ってた。

でも、彼女は思ってる以上に傷ついていたらしい。

V「そんなの気にしないよ。ただ君と仲良くなりたいんだ。それに、日本のアニメ好きだし。」

「あー…ゆっくり話してください」

忘れてた！彼女は韓国語がわからないんだった！！

V「俺たちは友達！！わかった？」

そう言って手を差し出すと、彼女は意味がわかったのか顔を真っ赤にさせて遠慮がちに手を握り返してくれた。

V「Aって呼ぶね？俺の方が年上だよね？オッパって呼んで」

「はい、テヒョニオッパ…」

それが、Aと初めて喋った日で、初めて笑顔を見た日。