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「……最初はそんなことなかったんだ。……付き合ってから少し経ったらだんだん『髪染めて』とか『このアクセサリーつけて』とか言われるようになって、初めはアイツの好みになれるならと思って色々頑張った。
ピアス開けてって言われたとき断ったら、それまでそんなことなかったのに急に怒鳴られて……。でも、俺がびっくりしてたらすぐに謝ってくれた。『慧のことが好きだから俺のものだって証がほしかった』って……。この時はまだ、嫉妬してくれてるのかなって思ってた。」
「でも、だんだんと要求がヒートアップしてきて、友達とご飯食べて帰っただけなのに『浮気だ』って言われたりするようになった。……一度ちょっと香水がキツめの先輩と大学で話したことがあって、……そのあと会ったときに初めて殴られた。さすがにおかしいと思って別れようって言ったら急に泣き出して、『けいがいないと生きていけない。本当に愛してるんだ、だから嫉妬してしまう』って言われて……。だんだん俺もわからなくなっちゃって……。」
「最近特に酷くなって、『大学でも他の人と話すな』って言われて……。少しでも他の匂いが着いたりしてたら、暴力ふるわれて……。やめてって言っても聞こえてないみたいに、人が変わったみたいになるんだ。でも最後は抱きしめられて……もうわからない、アイツのことが……自分のことも……。」
伊野尾くんが話してくれたことは衝撃すぎて、何も言えなかった。
彼氏の度が過ぎた束縛……。暴力への恐怖とその後の愛で完全に洗脳している、典型的なDVだと感じた。
「アイツのこと、ほんとに好きだった。……でも今はもうわからない。好きって言われて、愛してる、って言われて……ああ、この人には俺がいなきゃダメなんだ、って隣にいなきゃって思うけど、それが好きだからなのかはわからない……。」
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