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ストーカー対策の護衛と称して始まったこの関係。悪に晒されている彼女に漬け込んでこんなことしてる自分があまりにも下劣で、こんなことでしか彼女の隣にいられない自分も、こんなことを考える自分も何もかもが極悪で非道で乾いた笑いが込み上げてきそうだった。
ストーカーとしてること対して変わらないんじゃないかとか思うよほんと。それでも君は拒絶することなく僕にされるがままさせてくれるから僕の感情をぐちゃぐちゃにしてくる。
今までローレン以外に触れさせることを許さなかった君が手を繋いだり、僕の膝の上で大人しく座って髪をいじらせてくれる。そんなの僕を受け入れて許してくれてるのとさほど変わらないじゃないか。君のテリトリーに僕が侵入していることが今でも信じられないけどきっとそれは今だけで。この事件が解決すれば僕が護衛する意味も価値もなくなる。そうなれば僕らはまたただの先輩後輩になるわけで。
決して、君を苦しめる原因を解決したくないと思っているわけじゃない。そうじゃないけれどこの関係が続けばいいのに、なんて思う僕はきっとその時点で君の隣にいる資格なんてないんだろう。
叶先輩って僕の名前を呼んでふわりと花のような笑顔で僕を見つめて隣にいてくれるからまるで君が僕の恋人になったかのように錯覚してしまう。確かに今は偽の恋人ではあるけれども。彼女に向けられる敵意はできる範囲すべて消し去っているのにあの写真や気持ちの悪い手紙はまだ続いていて。
確かにこの関係は続いて欲しいけれどそれとこれは別で。
家に帰ってたまに見るポストには相も変わらず、仰々しい見た目の封筒がそこにあった。牽制をかけているのにも関わらずこの仰々しい封筒が投函される頻度は2週間に一回から1週間に一回の頻度へと変わっていった。
これだけ牽制をしていてもなお彼女に危害を与えるこいつは不愉快極まりなかった。当の本人は気にしてなさげに笑って大丈夫なんて言うけれど僕が大丈夫じゃないから無理って言いたくなる。
『叶先輩?顔すごい怖いですけど…』
「……ぇ、あごめんね。あまりにもこの手紙がキモすぎて」
『はは、確かにえらく熱烈なんですねこの人は』
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作者名:月河 あをい | 作成日時:2023年11月23日 14時