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「───もしもし?」
懇願が叶ったのかはたまた偶然か胸に抱えた機械から聞こえた声は無機質な声なんかじゃなくて。あ、生きてるってわかった瞬間あれ私何伝えたいんだっけってなんも分からなくなって頭も回んなくて言葉を発することが出来ずにぐるぐるぐるぐると必死に頭を巡らせた。
「…もしもし?Aちゃーん?どしたの?僕もうそろそろ、」
『っぁ、せんぱぃ、』
「な、にどうしたの、なんで、」
「っAちゃん、なんで、」
ガチャリと重い金属の音がした後に手に握った機械から聞こえていた声の持ち主は、息を少し切らして苦しそうな顔をして目の前に立っていた。
床にへたり込む私と立ったままの先輩。普段から身長差で見上げなくちゃいけないのにそんな状態だからほぼ真上を見上げる。なにか音を発することも無くバチりと絡まった視線のせいかその時間が長く感じた。実際は多分数分にも満たないわずかな時間なのだろうけれど。
ふと気づいた時にはいつの間にか叶先輩は私と同じ目線にいて、その手は私の目元をなぞっていて。あ、叶先輩の体温だ、って自分と違う温度を感じて生きてるってことを実感した。ちょっと表現が変態っぽいかもしれないけど。
叶先輩の右手をぎゅっと強く強く握る。いつもの先輩の手だ、私の好きな手だって安心して不安もほろほろと溶けて崩れていく。それと同時に堰を切ったように涙もボロボロ出てくるからあー、私ダメだなって思った。そんな私を叶先輩は優しく抱きしめてくれるから、もうこの感情に嘘はつけないのかなって。
ふわりと抱き上げられてそのままリビングのソファへと、一緒に沈んでいくから私が少し目線が上で向き合う形になる。
「こんなに泣いてるのは僕のせい?」
まだ泣き止まない私の目元を拭いながら苦しそうな顔で問うから違うよって言いたいのに言葉が詰まって苦しくて何も言えずに先輩の肩口に顔を埋めて首を横に振る。そしたらそっか、って言ってするすると頭を撫でてくれるから敵わないなって思った。
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ご無沙汰しております。
こちらの完結目処が立ちそろそろ終わりに近づいてきているということで新作についてのアンケートをXにて実施しております。
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作者名:月河 あをい | 作成日時:2023年11月23日 14時