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でももし叶先輩に何かあったら?私がここに来たせいで標的が私から先輩に変わっていたとしたら?それに叶先輩は本来体調が悪い。学校を休むくらい体調が悪いのだ。もし道端で倒れたりでもしていたら、それこそ私は後悔しかしない。そうなる前に、と頭ではわかってるのにその1歩が踏み出せなくて。
こんな時に、いざと言う時に私は弱くて情けなくて無様だ。気高く強いお嬢様だなんて異名があるくせに本当の私は弱虫で情けなくてどうしようもないただの人間Bなのだ。なんてそんなこと考えると涙が滲み出てきて。泣いてる場合じゃないだろ自分って言い聞かせても涙は止まらなくて。


『っは、はは、ばか、みたい……』


そこが玄関だとか服が汚れるとかそんなことまったく気にせずにぺしゃりと床に座り込んだ。右手に握られた役に立たない機械からは相変わらず無機質な声が流れていた。
もう分かってるよ!って叫びたくなるくらい何度も繰り返されるその声は今の私をイラつかせるのにあまりにも十分すぎた。この期に及んでまだ動けない自分が嫌で不甲斐なくて結局叶先輩に全部貰ってばっかりじゃん。私何も返せてないじゃんって止まってたはずの涙がまたじわじわと姿を現した。

くるしい、つらい、こわい。そんな感情が私を支配していく。いつしか心を絆されて、頼って、縋って、彼がいなければ不安になってしまうような身体になってしまったんだ。私はなんて無様で滑稽で浅はかで単純なんだろうか。
滲む視界と細くなる呼吸のせいで回らない頭で何とかもう一度コールボタンを押す。お願い、今度こそ、出てお願いって気持ちを込めて耳に当てるわけでも画面を見るわけでもなく胸に抱え込んで懇願するかのようにする。








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作者名:月河 あをい | 作成日時:2023年11月23日 14時

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