猫かぶりは得意です 2【2j3j】 (ページ12)

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長い長い昔の夢を見ていた気がした。どんな夢だったかなんて内容は覚えていないのに流れてくる涙は止まらなくてなんだっけ、って。
目を擦って開ければ見慣れてはいないけれども見た事ある景色で、あれ？となる。
なんで私叶先輩の家にいるんだっけってなって記憶を辿っていくうちにあのストーカーのことを思い出して背筋に嫌な感覚がツゥーっと流れて行った。そうだ、叶先輩は？どこ？
叶先輩の寝室を出てリビングに顔を出す。けれどそこに叶先輩の姿はなくてただ閑散とした部屋が広がっていた。お風呂にも、トイレにも、どの部屋にも叶先輩はいなかった。あれほど心配性な叶先輩があんなことがあったあと私を1人置いてどこかに行く？そんな考えが出てきて。けれどもそれはさすがに自惚れすぎというか、期待しすぎというか、勘違いしすぎというか、なんというか。
もしかしたらコンビニとかちょっとした買い物に出てるだけかもしれないし、何か用事があったのかもしれないしとか考えるけど、心配で不安で怖くて。
スマホを鳴らしてみても機械越しに聞こえる声は無機質な声で。ざわざわと騒ぎ始める胸と額から滲む汗がやけに嫌な感覚だった。外に出て探そうと思ってもいざドアノブを手にすればその手はがたがたと震えていて。手だけじゃない、足も震えて呼吸も覚束無い。もし、まだ居たらとか遭遇してしまったらとか思ってしまえば体は言うことを聞いてくれなくて。犯人の顔をはっきりと見たわけじゃないし、心当たりだってない。そんな状態で外に出たって私は怯えながらまともに歩けるだろうか？答えはもちろんNoだ。

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