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最初は戸惑ったこの体制にも今となっては慣れたもので叶先輩にはされるがままだった。クーラーの効いた教室では暑いから無理だなんて言い訳は通用する訳もなく叶先輩の手の内というわけ。
普通ここまでする?と思ったけれどあれやこれやとなんだかんだ言いくるめられるから私自身も嫌ではないし、まあいっかとしていた。

公言したわけでもないのに情報が出回ったのは多分教室で普通にこういうことをしてるからだと思う。いつもの空き教室だったりに行かないのは叶先輩曰く、仮に校内に犯人がいる場合牽制になるからだそう。
私には相手がいるということを周知させることでトラブルや被害を最大限に避けるという策略。あとは多分普通に叶先輩の過保護というか心配性。共にする時間が長くなったことで分かったことがあるけれど叶先輩は超がつくほど心配性だ。ローレンに負けず劣らずの心配性。

私が彼に何も言わず御手洗に行ってるだけでなにかトラブルに巻き込まれてるかもしれないと捜索されそうになったくらいには心配性。もはや心配性の域を超えている気もするけれど。
それでもどこかこの距離感が心地よくて完全拒絶しない私も私だ。叶先輩の裏のない優しさや私を見る瞳が心地よくて安心できてなんだかんだ言って腑に落ちている。たとえそれが仮の関係だとしても名のない関係だとしても今は今だけは誰にも関与されない。

叶先輩のファンの女の子たちからの攻撃や敵意のある視線は止むことはないけれど、その攻撃も視線も全て叶先輩によって私の目に触れることはあまりなかった。
有言実行と言うべきだろうか、彼は本当に私のそばを離れなかった。そりゃ学校だから授業中や数分の休憩時間だとかは離れてるけれど朝もお昼も放課後も本当にピタリと私の隣に当たり前かのように鎮座していた。
女の子たちが狙う隙は本当にわずか少しの時間のみ。でも私の隣の席は今回のことがあったせいか前よりも過保護が増した気がするローレン。だからかせいぜい近くの席の人に小声で悪口を言われたり、紙が回ってきたりそんな程度のもの。

あれだけ私に攻撃を仕掛けてきていた女の子たちも今となれば大人しくなりむしろ私の懐に入り込もうとしているほどだ。叶先輩という人物はどれだけ偉大かが解らさせられた。同時に人間の醜さも露になってしまい嫌気もさしてしまったけれどもそれが人間というものなのだろう。






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作者名:月河 あをい | 作成日時:2023年11月23日 14時

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