君の声【１】 (ページ34)

今日:37 hit、昨日:12 hit、合計:118,207 hit

33話ページ34

結弦くんがリンクへの扉を開けるとひんやりした空気が流れてくる

『会場が違うせいかな？こないだより寒い気がする』

「それもあるけどやっぱりお客さんいるのといないとじゃ違うかも。それだけじゃ寒かったかな？」

『大丈夫。あんまり着ると弾きにくいから』

「そっか、明日はネックウォーマー貸してあげるね。」

リンクのそばを通りピアノのあるステージまで行く

『えっ、ちょっと待って!? 演奏するのってピアノだけ？』

ステージに上がれば、ほぼ真ん中に置かれたグランドピアノがあった

「他にもいるけどメインはピアノって聞いてるよ」

『…ちゃんと聞いてから引き受ければよかった…。でもやるしかないね』

「俺も頑張るからAちゃんも頑張って。じゃ、練習行くね」

結弦くんがリンクに向かったのを見届ける
鍵盤に指をのせ、軽く息をはいてからピアノを弾いていく

久しぶりに弾いたわりには指は動くかな
何曲か引き終わったとき後ろから拍手が聞こえた

『誠司くん!』

「久しぶりに聴いたけど腕は落ちてないね」

『お父さんは大丈夫なの？』

「大丈夫。検査入院って言ったって本当は３日でいいんだけど、この機会に休んでもらおうと思って聡さんには内緒で１週間にしてもらったんだよ」

『はっ？』

「Aちゃんには悪いと思ったけど、聡さん同様Aちゃんならやってくれると思ったからね」

『他人事だと思ってるでしょ？』

「ははっ、僕はサポートするからAちゃんはピアノに専念してよ。楽譜持ってきたよ。７時までここ使えるみたいだから弾けるようにしといてね」

『弾けるようにって…あと２時間しかないけど…』

「そうだね。耳コピするなら聡さんの音源もあるよ」

忘れてたけど誠司くんって普段優しいのにピアノになると厳しいんだよね

『…音源もください』

「はいどーぞ。１曲目がピアノメインので、他に２曲あるから。じゃ僕はもう少し打ち合わせあるから頑張ってね」