時を投げ出してでも。 ページ38
涼介さんの夢も、それを共に目指す啓介くんの意思も。
理解するのに時間はかからなくて、それだけ彼らと時間や出来事を共有できたことが嬉しい。
けれど、彼を理解すればするほど、夢に対する現状とゴールを考えれば考える程。
選択肢は少しずつ絞られていって、それを彼もまた分かっていて、だけれど私達は中々それを話せずにいた。
これは多分、彼の甘えとか私の平凡さなんて簡単なものじゃなくて、一緒にいたから分かりあえて、これからも一緒にいたいから決断すべきだと思った。
気持ちと距離が近ければ安心する。だからこそ躊躇ってくれているのなら、それは幸福だ。
物理的な距離が離れていたって、彼が涼介さんとの夢に集中して真っ向から挑んでいけるのならそれはお互いの別れではなかった。
分かっていて、かみ砕いて理解しても、いざ口を開くには大層勇気の欠片を集める必要があるものである。
・
FDは、比較的ノーズが軽い。故にシャープなコーナリングへと導ける。
だがしかし、ノーズが軽い故に速度域が高くなればなるほど前輪の接地感が消えてしまう。
「…車高を前下がりにして前輪を抑えてたけど、涼介さんの言う通りコーナーの立ち上がりで後輪が浮くよね」
「……おう」
ビデオを見返す、啓介くんの部屋。
コーナーを抜けきったところで、ソファに座るまま指をさす。
「荷重が後輪に移しにくいから、横に逃げそうになるだろ？」
「そうそう、荷重移動がもう少し上手くなって、涼介さんのOKが出たら車高調整しようかなって思ってる」
何かを言い出したそうな啓介くんと、それを分かって尚、聞く事も話す事もできない私。
珈琲の湯気はやがて消え、ただただFDの考察が続く。
素直で優しくて、誰よりも思ってくれる啓介くんを、これ以上困らせたくない。
ステアリングや純正パーツ、車雑誌が散らばる部屋。
時折揺れるカーテンと時を刻む秒針が、私の背を押そうとする。
「…あのさ、」
私は啓介くんのすべてが好きで、車に一生懸命な、遥か先のゴールを目指して走り続ける姿が大好きなのだ。
ずっと追いかけていきたい 応援していきたい それでも私はきっと、啓介くんや涼介さんの目指していく世界で息ができる程秀でていない。
「………いちど、別れる…？」
コツリとまたひとつ時が進んで、床へ落ちた視線が静寂を持ち寄る。
やっとのこと呟いた声は、自分が想定していたよりずっとくぐもって聞こえた。
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み(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» わぁぁ！！こちらもお読み下さり、また数々の嬉しいお言葉ありがとうございます💖推しへの愛をどんどん膨らませていきましょ💕💕 (3月12日 7時) (
レス) id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 啓介ぇぇぇぇぇええええ！！！！好きだ…………。最高です。こんな小説読んでしまったらアニメの続き見る時思い出してしまうではないですか！！！最高です。啓介への愛が3倍程に膨らむくらい最高の作品に出会えて良かったです😭ありがとうございました！！！ (3月12日 3時) (レス) @page46 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 彩さん» 彩様こんにちは！こちらこそ、お読み頂きコメントまでありがとうございます、とっても嬉しいです💕啓介くんの溺愛が見たい…！！と思っての執筆だったので、楽しんで頂けて幸せです(*^^*)ありがとうございます💖😊 (12月27日 8時) (レス) @page35 id: afd02ed077 (このIDを非表示/違反報告)
彩 - こんにちは。数少ない啓介夢をありがとうございます。真っ直ぐな啓介にドキドキしながら読ませてもらいました。主人公への独占欲も堪りません(〃∇〃) (12月27日 0時) (レス) @page45 id: bd691f240a (このIDを非表示/違反報告)
み(プロフ) - 智真さん» こんにちは！コメントありがとうございます！！そう仰って頂けて本っっ当に嬉しいです💖啓介くんイイ男すぎますよね…！こちらこそお読み頂きご感想まで頂けてとても嬉しく思います、ありがとうございました😊 (2023年1月23日 8時) (レス) id: b66859cee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：み
| 作成日時：2022年7月2日 8時
