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広臣は何を言うわけでもなく
私の正面、ソファーに座って
たまに水を飲んで、部屋を見渡して、
また水を飲んで。
この空気に先に耐えられなくなったのは私だった。
『あのさ、』
もう電話しないで、
会いに来ないで、
そう告げて下を向いた私に広臣は
嘘だろ、と言った。
『嘘じゃない』
いや、嘘なのかもしれない。
だけど、嘘じゃない。
だって、会っても何にもならない。
・・・それは隆二くんとの関係と同じだけれど、
それでも広臣とは会わないほうがいいと思った。
臣「俺にはお前しかいねーんだけど」
こんなにまっすぐ言われたのは
いつ振りだろう。
付き合っていたあの頃、
最後のほうは好きだ、
なんて言葉すら聞けず
仕事に追われた広臣とすれ違って
私は彼との未来を見据える事を辞めた。
臣「俺はお前じゃなきゃダメなんだけど」
その言葉に続けて少し小さな声で、
少し弱々しく彼が放った言葉。
きちんと私に聞こえた。
ー お前は違うの?
その問いかけに上手く答える自信がない。
その問いかけの答えが自分でも分からない。
『とっくに終わったんだよ』
だから、返した言葉は
質問への回答には
的外れなものになってしまった。
臣「終わってんなら、また始めればいいだけじゃねーの」
『同じことの繰り返しだし。』
また始めても、
また終わるだけなんだよ。
また私は嫉妬を繰り返す。
『それに、』
『それに・・・私今、好きな人いるから。』
それは紛れもなく隆二くんの事で、
だけど、”好きな人”という言葉を口にした瞬間、
一瞬にしてその言葉が嘘のような気がした。
臣「付き合ってんの?」
『付き合ってない。付き合うつもりもない。だから、もう本当に』
臣「その先は言わなくていいよ」
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ねーやん(プロフ) - お久しぶりです(^ー^)大変でしたね( 。゚Д゚。)5章も楽しみに待ってます(^ー^) (2017年5月23日 22時) (レス) id: 17d749540e (このIDを非表示/違反報告)
すまいる - 続きが早く読みたいです。 (2017年5月16日 15時) (レス) id: 9729cafb7d (このIDを非表示/違反報告)
けいちゃん(プロフ) - 臣くん!がんばれー諦めるな! (2017年5月12日 8時) (レス) id: f3039bc482 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃき(プロフ) - さのんかさん» さのんかさん⇒ありがとうございます!臣くんおせおせ(笑)私も書きながら思っちゃってますwこれからもよろしくお願いします! (2017年5月12日 2時) (レス) id: 8c3f511bed (このIDを非表示/違反報告)
ちゃき(プロフ) - 藍虹さん» 藍虹さん⇒ありがとうございます!臣くんファンからの隆二押し、すっごい嬉しいです!!私の中の隆二はとことん優しい人なんでこんな感じになっちゃいました(笑) (2017年5月12日 2時) (レス) id: 8c3f511bed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃき | 作成日時:2017年4月10日 16時