【レトルト】狼少女、拾いました (ページ2)

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寒い…寒い…
お腹が減った
頭が痛い

…突然私の体が暖かくなる

「…大…夫…か！？…き…」

声が聞こえる
なにを言っているのかはわからない
でも…

私は目を開く
そこにいたのは…

『っ！？…誰だお前っ！』

…全く知らない奴だった
太陽と同じ色をした二つの丸がこっちを見ている

「うわぁっ！…あっあんま動かん方がええんちゃう？」

そいつは水を持っていた
素手で

こいつ…どうやって水を浮かせているんだ…？

「喉、乾いとるやろ？」

そいつは腕をこっちに伸ばしその水を私に差し出した

『来るなっ！…どうせ…お前も私の命を狙ってるんだっ！そうなんだろ！！』

私はそいつの腕に噛みついた

血の味がする
こいつもこれで懲りただろう

瞬間、頭にゴツゴツしたものの感触

「大丈夫、大丈夫やて。君の命は狙ってへんよ」

こいつは…私を撫でている
硬い手で

噛みついたの…悪かったな

噛みつくのを止め、傷を舐める
血は止まらない

『すまない、つい…』

「ん？…あぁ、良いよ良いよ。何より、無事で良かった」

それからこいつにはいくつもの質問をされた

家は何処だとか
名前はなんだとか
どこからきたのかとか…

そのどれも、私は覚えていなかった

「えっ！？…おっ…覚えてないの…？…それは困るなぁ…名前…」

そいつは酷く困っていた

名前なんて必要ないだろ
どうせ誰にも名前なんて呼ばれないんだ

「うーん…あ、じゃあ！」

何かを思い付いたようだ
…聞いてやるか

「君は今からAちゃん！」

私は人間から初めて物をもらった

それはAという名前だった