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「もしもし」




海人「スーパーで買ったもの忘れて行ってるけど?」






やらかした。キッチンに置かせてもらってたのすっかり忘れてた。






「ごめん、取りに行」


海人「今から行くわ」






被せてそう言われて電話が切られてから数分後。


インターホンがなった。


さっきの出来事を思い出して早まる鼓動を落ち着かせて、平然を装ってドアを開けた。




海人「はい、忘れ物」




今度は目が合った。


少し残っている不機嫌そうな色。




「ありがと」




袋を受け取ると、じゃ、って言ってすぐに帰ろうとした中村さん。




「ねぇ」




"なんで手握ってきたの"



自分でもびっくりするくらいはっきりした声が出たのに、ねぇの続きは言えなかった。


ポケットに手を突っ込んだまま少し気だるそうに振り返った中村さんを見たら聞けなかった。


たまに見せる無邪気そうな笑顔とは真逆の、少し冷めた目と怠そうな態度。


わからなかった。


なにを思っているのか少しもわからなかった。








「なんでもない、ありがとね、おやすみ」









一方的にドアを閉めた。


閉める最後まで変わらなかった表情。


気にするだけ無駄なのかもしれない。


そんなことわかってる。









心に突っかかったまま1週間が経ったころ。


バイトから帰ると玄関前に中村さんが立っていた。





「中村さん...?」




エントランスの壁にたれかかってスマホをいじっていた中村さんが顔を上げた。


私の顔を見て、おかえりって。


にこやかまではいかないけどこの前よりは穏やかな表情にほっとした。





海人「飲も」





そう言って下げていたビニール袋を顔の横に持ち上げた。




「急だね」


海人「なんか飲みたくなってさ」


「他に飲んでくれる相手いないの?」


海人「Aちゃんと、飲みたくなったの」






平然を装うのは上手い方。


でも私今うまく笑えてる?


この前のこと気にしてるの私だけ?





私が家の鍵を探してる横で、Aちゃん家でいい?って。





海人「話したいことある」





私が黙っていると、いつもより落ち着いた声でそう言った。

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作者名:guminchu | 作成日時:2021年3月6日 1時

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