短編集 (ページ5)

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手当て編の続きページ5

包帯を巻き終えると、ヴァーニーは立ち上がって私を見た。

　そして何故か突然抱きついてきたのだ。
あまりの出来事に頭が追いつかない。どうしてこうなった。というかなんで急にハグされてるんだ。
何が何だかわからず戸惑っていると、私の耳元で彼が囁いた。

「ありがとう、助かったよ」

　ゾワッとした感覚に襲われた。これは一体なんだろうか。今まで感じたことの無い不思議な感情が心の中に渦巻いている。
　だけど不思議と不快感はなかった。寧ろ心地良いような気さえする。……この感情の正体は一体何なんだろう。

　わからないけれど、もう少しだけこのままでもいいかもと思ったり思わなかったりした。

「人からこうやって心配されて手当てされるのって……こんなに心地いいんだねぇ……」

『そうなの？』

「うん、そうなんだよ〜！なんだか安心感があって気持ち良くて……。それにA優しいし……。なんか癒された気がするよぉ〜」

『それなら良かったよ』

　私は少し笑って答えた。するとヴァーニーは私の顔を覗き込んで言った。

「Aの顔を見てたらもっと癒されちゃうなぁ」

　そう言って彼は私の頬を撫でた。私は思わずビクッとして後ろに下がった。
　今のは何！？どういうこと！？心臓がバクバク言っている。顔も熱い。きっと赤く染まっているに違いない。私は自分の胸を押さえながら落ち着かせようと深呼吸した。その様子を見たヴァーニーは首を傾げていた。

「どうかした、具合悪いの？大丈夫？」

『ああいや、そういうわけじゃないんだけど……。ちょっとびっくりしたというか……』

　まさかヴァーニー相手にドキドキしてしまったなんて言えない。言えるはずがない。どうにか誤魔化そうと必死になっていると、彼は納得してくれたようだ。

「そうなの？？あ、もうそろそろ戻らなきゃ……。名残惜しいけど、A改めて手当てありがと〜、またね」

　そう言って彼は去っていった。私はその後姿を見つめたまま動けなかった。まだあの時の余韻が残っている。

　ヴァーニーの言葉を思い出す。あれは、まるで……。

「あのさ……Aごめん、言い忘れてたことがあったから、聞いてくれる？」

　閉められていた扉が音を大きくたてて開けられ、振り返るとそこにはヴァーニーがいた。

　何かと思い待っていると、彼はニッコリ微笑み言った。私はその言葉に幸せを噛み締めながら爛々とした双眸をしっかりと捉えて返事をした。