転生アリスの図書館生活～ヒドインも悪役令嬢も私の平穏には必要ない～ (ページ9)

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沈む夕日と… ページ9

賑やかだけどつまらないお茶会が終わり、窓から差し込む光が金色に輝き出す頃。

「お姉さま」

私は庭の大きな池に映る夕日をじっと眺めていた。

「お姉さま！」

このまま二つの夕日が少しずつ沈んでいく様子を観察していると、後ろからずっと誰かに呼ばれているのに気付いた。

「…なぁに、カトリーナ」

平川有栖の日課を邪魔しないで欲しい。こんな時まで貴族令嬢をやらされるなんて…そんなに有栖だった頃の行いが悪かったのかしら。

「わたし、お姉さまには負けませんから！いつか絶対にこの家を追い出してやりますから！！」

「あぁ、別に良いわよ、それ位。自分でお金を稼いで生活するから」

カトリーナは私が泣き喚くとでも思っていたのか、口をパクパクさせて声にならない声を出す位驚いていた。

「自分でお金を稼ぐ等…平民がする事ですわよ、お姉さま！」

「そう。なら聞くわ。次々に新しい物を生み出しているのは、誰かしら？」

「そんなの、貴族に決まって…」

「あら、そうなのね。古い伝統に縛られて、身動きがとれなくなっている私達がどうやって新しい物を生み出すのですか？」

夕暮れの空を、金色に照らされた雲が流れていく。

透明な池に映った空を見ている内にこの空気に耐えられなくなったのか、いつの間にかカトリーナの気配が消えていた。

カトリーナを追い払うのに成功した私は、夕日が完全に沈むまで、ずっと池の前にしゃがみ込んでいた。