困った家族達 ページ3
ガチャリと部屋の扉を開け、無駄に長い廊下をずんずんと突き進む。途中で困ったような使用人達に止められたが、私は気にせずに歩き続けた。
「アリスの記憶なら、この辺が団欒部屋になっていたのよね」
皆腹違いの妹を構ってばっかりで、アリスの居場所なんて殆ど無かったんだけどね。
私は特に何の躊躇いもなく団欒部屋の扉を開けた。中にいた人達はバーンと大きな音が鳴ったのに驚いて、カラコンのような目をまん丸にしていた。
きっとこの人達がアリスの家族だろう。私は無表情のまま部屋に入り込み、静かに扉を閉めた。
「ア、アリス…?体調はもう良いの?」
これまでアリスの事を空気のように扱ってきた母が、目を見開いたままそう言った。
今までのアリスなら、「はい」と言ってそのまま部屋を出て行ったのだろう。だが今の私は大人しく出て行けるような良い子ではない。
「今更何を言っていますの?私が部屋に引き篭もっている間、誰も私の体調など気にしてくれていませんでしたわよね?」
家族達に冷たい視線を送ると、皆凍ったように動かなくなった。
「図星ですのね。残念だわ、少し期待していましたのに」
誰も口を開かない。私はハァと溜息を吐いて部屋から出て行こうとした。
扉が完全に閉ざされようとしたその時、これまで黙っていた妹が可愛らしい声で私を呼び止めた。
「待って、アリスお姉さま!」
絵本の妖精のような桃色の髪をフワフワとさせながら、舌足らずの声で私の名前を呼ぶ。
普通の人なら思わず扉を閉ざす手を止めてしまうのだろうが、惑わされなかった私はにっこりと笑って扉を閉めた。
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作者名:もか | 作成日時:2020年5月4日 19時