：３６ ページ36
.
「 Aを好きじゃなくなったことなんて一度も無い 」
樹の顔が、よく見えなかった。
だって私の瞳はたくさんの涙で覆われていたから。
「 … 泣くなよ 」
そう言って、切なそうに下がる眉毛。
それと同時にゆっくりこちらに手が伸びてきて
「 あの時は、嘘ついてごめん 」
「 未熟な俺にはあの方法しか思い浮かばなかった 」
今までのことを思い出すように、謝る彼を見て苦しくて
首を横に振って彼を見つめた。
「 今、本当のことが聞けたからもういい 」
早く自分の気持ちを伝えたかった。
樹を好きで良かったと早く伝えたかった。
「 A 」
熱い視線で見つめられて
「 ずっと … ずっと、好きでした 」
「 俺ともう一度付き合ってくれませんか 」
本当に待ち望んでいた言葉。
私が望んでいた未来。
泣かずに、笑顔で返事をしようとしたのに
やっぱり私は泣き虫でまた涙が溢れる。
「 あ〜、もうまた 」
優しく細い指で私の涙を拭いながら
大好きだった優しい笑顔で笑う。
「 私も、樹のこと好き 」
そう言えばぎゅっと力強く抱きしめられて
樹の温かい温もりに包まれる。
.
私が今、大切にしたい人。
心から好きだと思える人。
顔を見つめあって微笑むと、
ゆっくりと近づいてくる樹の顔。
惹かれるように目を瞑り、唇に彼の温もりを感じた。
照れくさそうに笑う君が、今日も愛しい。
Fin
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Mois
| 作成日時：2020年9月29日 22時
