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「 Aちゃんが毎朝、声掛けてきてくれて 」
「 俺ほんと嬉しくて 」
「 だんだんAちゃんのこと好きになってた 」
懐かしむように話し始める先輩。
「 ずっと … ずっと、先輩が好きでした 」
彼に酷い振り方をされたあの日から
私は男の人が信じられなくなった。
世の中には優しい人もたくさんいると分かっているけれど
いつか裏切る、嘘の塊だと思うようになってしまって
「 そんな私を救ってくれたのは先輩でした 」
新しい恋を教えてくれたのは、紛れもなく先輩だった。
嘘偽りのない優しい笑顔に心が温かくなった。
「 Aちゃんが俺のこと好きなの知ってたけどね 」
「 えっ 」
「 だって、分かりやすかったもん 」
急に恥ずかしくなって、顔が熱くなる。
「 でも、Aちゃんが俺を好きじゃなくなったのも 」
「 すぐ分かった 」
Aちゃんのこと、よく見てたから
という先輩はやっぱり切なそうで。
その横顔を見ていると苦しくて
また目に涙が溜まり始めた。
「 はい、もう泣かない 」
「 帰るわ、Aちゃんありがとう 」
そう言って大きな手が私の頭を撫でる。
去っていく先輩の背中を見てまた泣いた。
俯けば、私の涙が床を濡らしていく。
「 あーもう、これで最後にする 」
力強く抱きしめられた私の体。
「 いつまでも泣いてるから引き返しちゃったじゃん 」
その言葉にまた涙が溢れて
私の涙は止まることを知らないらしい。
だんだん抱きしめる力が弱くなって
先輩の温もりが消えていった。
「 今度こそ帰るわ 」
「 また遊び行こうよ 」
先輩の誘いに大きく頷けば
今までで1番素敵な笑顔が返ってきた。
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作者名:Mois | 作成日時:2020年9月29日 22時