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名前を呼ばれても、
体が固まったように動けない。
早くここから、去りたいのに。
「なに？また俺に惚れた？」
この状況を楽しんでいる彼を置いて、
やっと動いた体で屋上を出ようとするけれど
「待って」
細くて、でも長い手に腕を掴まれた。
「もうちょっと話そうよ」
と、変わらない人懐っこい笑顔を浮かべる。
「…この高校だったの」
やっと出た言葉は、これだった。
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今年高校２年生になったばかり。
それでもまさか、彼がいるなんて思ってなかった。
「知らなかったの？俺はAの存在知ってたけどね〜」
ずっと変わらない緩い喋り方で
「私、もう帰るから」
いつの間にか離れていた手。
屋上のドアを開けて出ようとするときだった。
「A、またここ来てよ」
どうして、そうやって前みたいに名前を呼ぶの
どうして、平気で話しかけてくるの
まるで何もなかったように。
私たちは２年前に別れたんじゃないの？
「俺、基本的にはここにいるからさ」
夕日に照らされてキラリと光るフープピアス。
…大好きだった、そのピアス。
黒髪から淡いピンク髪に変わって、
制服のベルトの部分には鍵が付いている。
「…チャラ」
変わり果てた姿を見て思わず、言葉が漏れた。
「そんな俺が好きだったでしょ？」
そう吐く彼に何も言わず屋上を出た
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作者名：Mois
| 作成日時：2020年9月29日 22時
